かぼちゃの天ぷらで滑ったケガに賠償命令の「サミット」 両者の言い分は

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 売る方も「こんなことで……」と嘆息したに違いない。スーパーのサミットで買い物をしていた客が「かぼちゃの天ぷら」に足を滑らせ転倒。怪我をし、店は提訴された。しかも、判決はよもやの敗訴だった――。

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 今月8日、東京地裁でその「まさか」の判決が下った。スーパー大手のサミットに原告の客に対する57万円の支払いを命じたのだ。

 コトが起きたのは2018年の4月。大手電機メーカーのグループ会社に勤める当時33歳だった男性会社員が勤務帰りの夜7時30分頃、都内にあるサミットストア練馬春日町店で買い物をしていた。すると、レジ前に落ちていたかぼちゃの天ぷらで転倒し、右膝を打撲。その日は歩いて帰ったものの、後日に病院で靭帯損傷などの怪我と診断され、約11万円の治療費がかかった。

 サミット側は約6万円を支払ったものの、その後の店の対応が横柄だとして、男性は訴えることに。慰謝料115万円を含めた約141万円の賠償を求めたのだ。

 司法記者が解説する。

「天ぷらは13センチ×10センチほどの大きさ。従業員ではなく、利用客が落としたと思われ、また天ぷらと床は色が違うため気づけたはず、原告の不注意だというのがサミット側の主張でした」

 しかし、裁判所の判断は、

「レジ前の通路に天ぷらが落下しないように安全確認を強化すべきだった、としたのです。ただし、原告が天ぷらに気づくこともできたと、過失割合は5割。慰謝料請求額の約半分が支払われることに」(同)

されど「かぼちゃ」

「アメリカでは珍しくないですけどね」

 とは、消費者問題に詳しい弁護士。

「かつてマクドナルドのコーヒーをこぼして79歳の女性が火傷、約3億円の賠償がいったん下されたことがありました。人権意識の高いアメリカは企業に対する懲罰的な多額の賠償請求を認めることがあります。一方、日本では実際の損害度合への賠償となるので、額が大きくなりません」

 とはいえ侮るなかれ、と経済ジャーナリストの岩崎博充氏が指摘する。

「今回の一件はマクドナルドの裁判と似た事例で、企業としては不可抗力に近い部分もあると思います。賠償額が少ないにしても、今はネットやSNSで情報が拡散し、企業のイメージダウンにつながることだってある。だから、リスクマネジメントにはきちんと取り組まなければなりません」

 たかが「かぼちゃ」されど「かぼちゃ」というわけだ。元裁判官の田沢剛弁護士はこうも言う。

「今回の場合、事故を防ぐには、お客さんが天ぷらを落とさないようにしなくてはいけなかった。しかし、そのための妙案が思いつかない。店員に常時監視させるのか、物が落ちた時にブザーを鳴らすのか。そこまでの安全管理義務をスーパーに負わせられるのでしょうか」

 さて、訴えた真意を原告に聞こうとするも、梨の礫。

 代理人の弁護士事務所が、

「店の誠意が感じられず、交渉が決裂。裁判を起こしました」

 当のサミットは、

「今後は控訴審において、当社の対応が適切だったと説明してまいります」

 と両者は真っ向対立。

 ハロウィンを過ぎた師走に大手スーパーを襲った受難。このご時世、似たような災厄はどの企業にも降りかかりかねず、世知辛いと言う他ないのである。

週刊新潮 2020年12月24日号掲載

ワイド特集「絵に描いた餅」より

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