「桜を見る会」捜査の行方は 安倍前総理は不起訴?
「桜を見る会」の捜査が大詰めを迎えているが、果たして安倍前総理の逮捕はありえるのか。東京地検特捜部は、安倍氏への任意の事情聴取や事務所への家宅捜査も視野に入れているというが――。
***
速報「娘はフェイク情報を信じて拒食症で死んだ」「同級生が違法薬物にハマり行方不明に」 豪「SNS禁止法」の深刻過ぎる背景
速報「ウンチでも食ってろ!と写真を添付し…」 兵庫県知事選、斎藤元彦氏の対抗馬らが受けた暴言、いやがらせの数々
目下、東京地検特捜部の関心は「桜」と「卵」に注がれている――。
元農水大臣の立件を視野に入れた「卵」の疑惑を詳述する前に、まずは大詰めを迎えた「桜」の捜査について触れておこう。
言うまでもなく、疑惑の渦中にあるのは、安倍晋三後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭だ。11月23日に、読売新聞が朝刊1面で〈東京地検 安倍前首相秘書ら聴取〉と報じ、一気に問題が再燃した格好である。取材に当たる社会部記者によれば、
「安倍前総理の地元支援者らを集めた前夜祭は、毎年1人5千円の会費制で行われてきました。直近の5年間における会費の総額は計1400万円にのぼりますが、実際の費用はおよそ2300万円。差額に当たる約900万円を安倍氏側が補填していたとされる。さらに、ホテル側は安倍氏が代表を務める資金管理団体“晋和会”宛に領収書を発行したものの、安倍事務所はそれを廃棄したと説明しているのです」
特捜部は、前夜祭の会計は後援会の収支報告書に記載すべきだと判断しており、
「後援会の代表である前総理の公設第1秘書と事務担当者を、収支報告書への不記載を理由に政治資金規正法違反の疑いで立件する方針を固めています。現状では、二人とも略式起訴で済まされ、罰金刑が科される公算が大きそうです」(同)
今回の「桜」捜査に繋がる告発状にも名を連ねた、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏は手厳しい。
「この問題を立件する方向であることは評価しますが、秘書ら二人の罰金刑で終わらせるようなら、特捜部の存在価値はなきに等しいと言わざるを得ません」
たしかに、これでは大山鳴動して鼠二匹。しゃんしゃん総会ならぬ、「しゃんしゃん捜査」の感は否めない。
「報道によれば、費用の不足分を負担したのは晋和会だった可能性が高い。では、差額を補填するためのお金を晋和会はどうやって用意したのか。それこそ、安倍前総理自身の文書通信交通滞在費や、官房機密費が使われたとも考えられます。これらは本来、公務に使うべきお金なので、政治活動に用いられた時点で法に抵触します。晋和会の代表である安倍氏の責任を問わずに、秘書だけを立件すれば問題の本質的な部分を見失ってしまう。少なくとも、公判が開かれない略式起訴ではなく、公開の刑事裁判で真相を明らかにすべきでしょう。安倍前総理が不起訴になったら、その理由次第で検察審査会への申し立ても有り得ます」(同)
菅総理は黙認
特捜部もこうした反応を予測しているのだろう。
先の記者が続けるには、
「特捜部は安倍前総理への任意の事情聴取や、事務所への家宅捜索も行う予定で、メディアも臨戦態勢です。そこまでやっておけば、もし“検審”に申し立てられても、特捜は捜査を尽くしたという体面が保てますからね」
無論、事情聴取や事務所へのガサ入れが現実のものとなれば、安倍前総理が被るダメージも決して小さくあるまい。
では、官房長官時代に“内閣の大番頭”として安倍一強を支え続けた菅総理は、この捜査を事前に関知していなかったのだろうか。
官邸関係者が声を潜めて明かす。
「安倍政権下で政治家に絡む捜査案件が浮上した場合、捜査当局は、まず警察キャリア出身の杉田和博官房副長官にお伺いを立てるのが慣例でした。今回の安倍さんの件についても、首相官邸の事務方トップである杉田さんが内々に容認した。もちろん、それは菅総理も捜査を黙認したということ。菅総理が安倍さんを見捨てたとは言わないが、二人の関係にすきま風が吹いているのは間違いありません」
果たして、二人の関係にどんな変化があったのか。
「菅さんは安倍さんがうっとうしくなり、牽制したかったのでしょうね」
とは政治部デスクである。
今年9月に総理を辞任した安倍氏は読売、共同、時事、日経、日刊スポーツ、産経のインタビューに相次いで応じている。そこでは、〈(憲法改正の手続きを定めた)国民投票法改正案を成立させるべきだ。本気でやるべきだ〉〈五輪・パラリンピックはぜひ実現してもらいたい〉と主張。さらに、靖国神社に参拝し、保守層へのアピールにも余念がない。
「体調不安を払拭するように発信を続け、安倍待望論や再々登板説が囁かれ出したのも菅さんにすれば面白くなかった。また、イージス・アショアが頓挫したことで、安倍さんが辞任直前までこだわった“敵基地攻撃能力”の保有についても菅さんは後ろ向き。安倍さんから引き続き検討してほしいと言われていたのに、11月4日の衆院予算委員会では、“閣議決定を得ておらず、後の内閣に効力が及ぶものではない”とまで明言しましたからね」(同)
これには敵基地攻撃能力保有に反対する公明党への配慮もあったようだが、
「安倍さんは気に入らなかったらしく、さらに踏み込んだ発信をするように。確執の決定打となったのは、それからまもない11日に、安倍さんが衆院初当選同期との会食で“私だったら来年1月に解散する”と発言したことです。総理の専権事項にまで口出しされ、さすがの菅さんも“秘書止まりであれば”と捜査を黙認、つまり事実上、了承したのだと思います」(同)
こうして「桜」の捜査に落としどころが見えた矢先、特捜が追うもうひとつの捜査案件が浮上した。それが「卵」の疑惑だ。
[1/2ページ]