“軍艦島弁護士”と呼ばれた文在寅、「3度目の敗北」は不可避に
世界遺産委員会に抗議する韓国
長崎県の端島、いわゆる軍艦島をめぐって韓国の政府とメディアがいきり立っている。端島の炭鉱などユネスコ世界遺産に登録された施設に関し、「元朝鮮人の強制徴用の歴史を伝えなければならない」とした世界遺産委員会の勧告を日本が無視していると主張するのだ。
日本政府が提出し、12月1日、世界遺産センターのホームページに掲載された「解釈戦略履行現況報告書(インタープリテーション戦略の実施状況についての報告)」に、以下のことが記載されている。
《今年6月、東京に開館した産業遺産情報センターに日本の労働者や朝鮮半島労働者が過酷な環境に置かれていたことを理解できる資料を展示した》
韓国政府は「端島で徴用された韓国人だけでなく、日本人も劣悪な環境にさらされていた」という内容は歴史歪曲で、「日本が韓国人を強制動員したと報告書に記載されていない」との主張を展開する。
韓国外交部は「日本が産業遺産情報センターで自国の暗い歴史に全く言及していない」とし、また日本政府に協議を提案したが応じていないということで、世界遺産委員会に抗議する方針を固めた。
一方、文在寅大統領は、徴用工賠償訴訟と同じく、今回の一件にいかなる言及もしていない。
人権派弁護士時代に“軍艦島弁護士”と呼ばれ、その後に政界の門をたたくことになった文在寅大統領。
彼にとって、軍艦島とはいったい何なのだろうか。
支持率アップに“利用”
2000年当時、釜山で人権派弁護士として知られた文在寅は、広島機械製作所に強制動員されたと主張した原告が三菱重工業を相手取って起こした損害賠償訴訟を引き受けた。
6年に亘った裁判で“軍艦島弁護士”と呼ばれた文在寅は、1審と控訴審で敗訴した。
敗訴した原告が落胆するなか、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と親交があった文在寅は青瓦台(大統領府)入りし、権力の階段をのぼっていく。
大統領にのぼり詰めた2017年、日本帝国主義からの独立を記念する「8・15光復節」の行事に、軍艦島に連行されたと主張する生存者を招待して支持率を引き上げることに成功している。
しかし、それから3年が経過し、80%以上あった支持率は半分以上削られて37%台に急降下。
他方、米国のマーク・ナッパー国務副次官補は「米国と韓国の緊密なパートナーは日本だ」と述べ、早急な日韓関係の改善を文政権に要求した。
日本との紛争や日本への刺激の回避が急務となった文在寅大統領が、軍艦島問題に対して公式に言及をするのは難しいはずだ。
裁判の1審、控訴審、そして今回の沈黙による“不戦敗”で3度目の敗北ということになるだろうか。
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