大臣室で現金を 大臣経験者から農水族重鎮へ 「鶏卵会社」捜査はどこまで広がるか
“違法性のあるカネだと認識していた”
農水相経験者である吉川貴盛、西川公也の両氏に数百万円単位の現金が流れていたことが降って湧いたように報じられる中、捜査を担う特捜検察は、いったい何を目指しているのか?
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《吉川さん、やってるみたいですよ》
そんな話が出回り始めたのは、今から1カ月半ほど前だろうか。
「吉川さんって言っても誰のことかわからない人が多かったんですが、さすがに少し前から報道されるようになって、元農水相だということはみなさん理解できるようになったようですね」
と、政治部デスク。
吉川氏に現金500万円を提供したとされるのは、鶏卵生産販売大手「アキタフーズ」の秋田善祺(よしき)前グループ代表(87)。
「秋田さんは“業界の政治部長”のあだ名を持つほどの人物で、地元を地盤としていた亀井さん(静香・元金融担当相)のスポンサーとして知られていました」
アキタフーズは年商400億円超で、「きよら」などブランド鶏卵で知られる企業だ。
秋田氏は代表だった2018年11月以降、農水省の大臣室などで、当時農水相だった吉川氏に3回に亘って計500万円を提供したとされる。
検察担当記者によると、
「捜査を担当する東京地検特捜部からすでに複数回事情を聞かれており、“違法性のあるカネだと認識していた。だから2人きりの時に渡した”旨の供述をしているようです」
現金授受の話は間違いない。だから、“すわ贈収賄”と思われがちなのだが、必ずしもそうではないようで、
「吉川さんは、“よし、今ここでやってやるよ”と関係各所に電話するタイプじゃないし、そんな力もない。加えて、秋田さんは業界の代弁者的な存在で、私腹をこやすっていうより“業界のためにぜひお願いします”っていう感じなんです」
“政治に籠絡された検察”を払拭したい
事実、「吉川氏に対するお願い」のタイミングは、鶏卵取引価格が下落する際に補填する経営安定対策事業にかかわることや、家畜のストレスを減らす飼育方法の国際基準に日本政府として反対を表明する時など、個人ではなく“業界代表”の性格が色濃い。
内閣官房参与を「一身上の都合」で辞任した西川元農水相に関しては、アキタ社のクルーザーで接待されていたことがわかっているが、その時はすでに大臣の座にはなかった。
もっとも、特捜検察がこの案件を手掛けるのは「彼らにとって都合が良い」と指摘するのは、ある永田町関係者だ。
「“自分の都合の良いように取り計らってもらう”のが贈賄の動機で、収賄側はそのために動くわけですが、アキタ側は個人というより業界だし、吉川さんや西川さんは特に何か便宜を図った様子もない」(先の担当記者)
「政界疑獄に限らず、特捜検察の捜査に関しては、検察トップの検事総長以下、検察幹部のゴーサインが出ていなければなりません。現在の林(眞琴)総長は、近年の“官邸による法務検察への人事介入”に不快感を隠さず、“政治に籠絡された検察”のイメージを払拭したいと思っていたから、今回の案件は渡りに船と言えるでしょう」
菅義偉官房長官(当時)や杉田和博官房副長官ら官邸中枢は、黒川弘務東前京高検検事長の総長就任を望んでいたが、一方で、稲田伸夫前検事総長は林氏に後継を委ねたいと考え、官邸vs検察トップという対立の構図が生まれていた。
黒川氏の定年延長という“奇策”まで弄して「黒川総長」への道が拓かれたが、賭けマージャン問題で黒川氏が失脚、林氏が総長に就くことになった経緯がある。
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