“NO JAPAN”を追求すれば、「韓国の食生活」が崩壊する理由

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日本部品で組み立てた自称“国産”

 農協が韓国農機工協同組合に提出した「農機購入支援事業の融資実績」によると、2013年から2018年5月までの5年間に韓国で販売された農機のうち、トラクターは13.6%、田植え機は40.5%、コンバインは29.9%が輸入機械で、なかでもヤンマー、クボタ、イセキが多かった。

 与党議員が標的にした田植え機は、26.1%を占めるヤンマーが最多だった。

 日本製農機具は韓国製より高額だが、農村の高齢化や人手不足が加速化するなか、年々シェアを伸ばしている。

 韓国製は日本製より安いといっても高額であることに変わりはない。

 耐久性に加えて信頼性も重要だ。自然相手の農業で天候は待ってくれないからだ。
 
 機械にトラブルが発生すると生産に影響が出かねないため、農家は信頼性が高い日本製品を選んでいる。

 韓国農機具市場で日本メーカーが占める割合は30%だが、“韓国製”農機具のエンジンは50%が日本製で、自動変速機や電装技術、統合制御システムなど核心部品は60~100%を日本製が占め、なかには100%日本製部品で作られた自称“国産”農機もあるという。

 韓国でミセモンジ(微細塵)と呼ばれるPM10、PM2.5が深刻化した2016年、韓国政府はディーゼルエンジンのCO2排出基準を強化したが、基準をクリアするエンジンを作っていた韓国農機具メーカーは、最大手の大同工業のみだった。

 大同工業は、農業機械の中核はエンジンという考えで、多額の開発費を投入してきた。

 1947年の創業から17年後の64年に韓国農機具業界ではじめて単気筒ディーゼルエンジンを発表、83年には多気筒ディーゼルエンジンを発表するなど業界をリードしてきた同社は、海外への輸出を目論み、グローバル基準を満たすティア5(Tier5、微細粉塵排出基準0.015μgkWh)エンジンの開発を進めている。

無断栽培、“国産”品種開発、“国産”機械

 その大同工業は、昨年、日本政府の韓国向け輸出管理強化を受け、部品需給に影響が出て生産に支障が生じる事態を憂慮した。

“国産”エンジンは主要部品を日本から輸入しているのだ。

 また、自動変速機や電装技術、統合制御システムなど、エンジン以外の核心部品の多くを日本から輸入している。

 業界2位の東洋物産が販売する農機具は、ヤンマー製エンジンを搭載する。

 日本政府の輸出管理強化で、米国製かドイツ製に切り替える検討をはじめたが、欧米からの輸入は輸送コストが増える上、エンジンを変えると機械の内部設計をやり直さなければならないという懸念がある。

 大同工業は、「日本依存から脱却するには政府の支援が必要」というが簡単ではない。

 まずはメンテナンスだ。

 農機具の購入者はほとんどが個人農家で、機械が壊れたからといって大規模修繕や入れ替えを行うのは容易ではない。

 また、農家は同じ機具を同じ時期に使うため、代替機の確保も難しい。信頼性が高く、実績がある日本製エンジンのニーズが高いのだ。

 次に農機具は需要が限られることから、開発費を投入しても回収できない可能性がある。

 さらには特許の壁が立ちはだかる。ヤンマーやクボタは、韓国企業にエンジンや部品を供給する一方、核心技術の特許を取得してきた。

 日本企業は1999から2017年の間、韓国で農業機械の核心部品のうち、トラクターは58%、コンバインは96%、田植え機は89%の特許を取得した。

 研究開発の名目でそれを模倣すると、特許権侵害になりかねない。

 煎じつめると、韓国農業は日本製農機具を使って、日本品種を無断栽培し、日本品種をベースに“国産”品種を開発して、日本製部品で“国産”機械を作っている。

 日本に依存し、日本製品を模倣する韓国企業は少なくないが、農業は産業全体が日本に依存する。

“NO JAPAN”を追求すれば、韓国の食生活は崩壊する。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月11日掲載

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