バイデンは金正恩とどう対峙するか オバマ時代のようには絶対いかない事情
なぜ核兵器と弾道ミサイルを開発するのか
北朝鮮が国際社会を敵に回し、強力な経済制裁を受けてまで核兵器と長距離弾道ミサイルを開発するのはなぜなのか。この疑問については、中国の核武装の経緯が参考になるかもしれない。
中国は第2次5カ年計画が失敗し、さらに農村の「人民公社」建設が失敗、また、おりからの天候不順も相まって、餓死者数千万人という大被害を出した(大躍進政策の失敗)。それでも毛沢東は核兵器の開発を推し進め、1964年に核実験にこぎつけた。毛沢東が「たとえパンツを履かなくても核兵器を作ってみせる」と述べたのは有名な話だ。
北朝鮮でも、金日成が経済の停滞や食糧不足で大量の餓死者が出たにもかかわらず、核兵器の開発を推し進めた。
もしかすると、北朝鮮も毛沢東の考え方を踏襲しているのではないだろうか。中国が米国とソ連という超大国の狭間で生き残りの手段として核武装を選択したように、北朝鮮もあらゆる資源を核兵器と弾道ミサイルの開発に注力しているのだ。
「最小限抑止」を目指している?
米国・ロシアを除く、英国、フランス、中国、インド、パキスタンの多くは「最小限抑止」に概ね沿った形での核戦略を採用しているといえる(厳密には「最小限抑止」の定義付けは論者によって異なる)。
「最小限抑止」の定義について、例えば、ローレンス・フリードマンは「報復によって敵に耐え難い損害を与えるのに十分なだけの核兵器を保有すること」としている。
北朝鮮にとっての「最小限抑止」のための戦力は、ワシントンやニューヨークを攻撃可能な核戦力を持つことだと思われる。しかし、北朝鮮が「最小限抑止」の範疇を超えて、より攻撃的な核戦力の確保を目標としている可能性は捨てきれない。
ただし、北朝鮮の国力を勘案すれば、中国のような規模の核戦力を保有することはできないだろう。米国防総省によると、中国は現在200発程度の核弾頭を保有しており、10年後には倍以上に増えると発表している。
北朝鮮が保有している核弾頭は、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計では30~40発である。今後、大幅に核弾頭を増やすことは、おそらく中国が反対するだろう。北朝鮮が中国の影響下から離れてしまい、中国の脅威になりかねないからだ。
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