バイデンは金正恩とどう対峙するか オバマ時代のようには絶対いかない事情
弾道ミサイルの発射実験を再開か
バイデン政権発足後、北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射実験を再開するだろう。観測気球として、最初はICBMを高高度(高度4000km程度)に打ち上げて日本海に着弾させるかもしれない。バイデン政権の反応によっては、SLBMの発射もあり得る。
ICBMとSLBMの発射の順番は逆になるかもしれないが、北朝鮮はバイデン政権への反発の意思表示として弾道ミサイルを発射し、米国を交渉のテーブルに着かせようとするはずだ。
オバマ政権のような「戦略的忍耐」は北朝鮮を利するだけということは、北朝鮮の核兵器の増加ぶりと弾道ミサイル開発の進展ぶりを見れば明白である。トランプ政権で米朝首脳会談が開かれ、米朝関係が好転しそうな雰囲気の中でも、北朝鮮は核兵器の生産を続けるとともに、弾道ミサイル開発に余念がなかった。
長距離弾道ミサイルだけでなく、北朝鮮は韓国を攻撃するための新型ミサイルの開発も進め、発射実験を複数回実施した。2019年5月以降、新型短距離弾道ミサイル等を繰り返し発射している。
北朝鮮は何を目指しているのか
北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル開発は何を目指しているのだろうか。最近の北朝鮮メディア(労働新聞、朝鮮中央通信など)の次のような報道内容が参考になる。
「米国の対朝鮮敵視が撤回されて朝鮮半島に恒久的かつ強固な平和体制が構築されるまで、国家安全のための必須的かつ先決的な戦略兵器開発を中断することなく引き続きたゆみなく行っていくであろう」(2020年1月1日)
「国家武力の建設と発展の総体的要求に基づき、国の核戦争抑止力をより一層強化して戦略武力を高度の撃動状態(攻撃可能な態勢)で運用するための新たな方針が提示された」(2020年5月24日)
北朝鮮メディアは、公式な内容しか報道しない。したがって、これらの報道を見る限りにおいては、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルは国家及び体制の生き残りのための「抑止力」を確保することを目標としていると考えることができる。
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