バイデンは金正恩とどう対峙するか オバマ時代のようには絶対いかない事情
2021年1月にバイデン政権が発足するが、トランプ政権の4年間で米朝関係は進展したのだろうか。史上初の米朝首脳会談の開催は、確かにトランプ政権の功績である。しかし、会談で合意したことが履行される可能性はないだろう。
2018年6月の米朝首脳会談で、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化の意思を表明した。また、核実験及び大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルの発射実験の中止を表明し、豊渓里(プンゲリ)核実験場の爆破を公開した。
朝鮮半島の非核化が具体的に進展していたら、トランプ大統領にはノーベル平和賞が授与されていたことだろう。しかし、北朝鮮は米国との合意を最初から守る気はない。米国との合意や宣言を破棄することは彼らの常套手段だからだ。
水泡に帰した米朝交渉
米朝関係は、これまで北朝鮮の核開発によって2度にわたる危機があった。1度目は(1992年~1994年)、2度目は(2002年~2008年)だが、筆者独自の集計によると、この間31回にわたり米朝2国間で交渉が行われている。
過去30年間の米朝関係を俯瞰して見ると、米朝関係は次のようなパターンを繰り返していることが分かる。
第1段階:懸案事項の生成(核実験、弾道ミサイル発射)
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第2段階:米国との直接交渉(交渉を難航させ、譲歩を引き出して合意する)
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第3段階:米国等からの経済支援獲得(経済制裁の一部緩和、食糧支援など)
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第4段階:米国との合意を破棄
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第1段階へ戻る
では、バイデン政権は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの発射実験が行われるというような「懸案事項の生成」が行われた場合、どのように対応するのだろうか。
米朝関係が極度に緊張していたトランプ政権発足当初の2017年は、米朝間の強硬発言の応酬によりチキンレースのような様相を呈していたため、第1段階の「懸念事項の生成」にあった。
そして、第2段階の米朝首脳会談が行われた。しかし、第3段階の経済制裁の緩和や経済援助の獲得には失敗した。トランプ大統領が北朝鮮に対する「興味」を失ってしまったからだ。バイデン政権では、恐らく米朝首脳会談での合意は完全否定されるだろうから、現在は第4段階にあるといっていい。
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