クリスマススペシャル!「聖書」「キリスト教」の入り口をのぞいてみよう!

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 「キリスト教」のイメージから離れたゆる~いつぶやきが話題を呼んでいる東京・上馬キリスト教会twitter部。12月25日発売の『芸術新潮』1月号の特集「上馬キリスト教会twitter部presents 絵で見る、愉快な新約聖書キャラ列伝」では、そのtwitter部で「まじめ担当」をしているMAROさんが、絵画を通して聖書のエピソードの数々や、クセが強くて人間味あふれる登場人物たちを紹介・解説しています。また、12月17日にはオンライン配信イベントも開催(詳細は文末で)。実は「キリスト教」や「聖書」をなんだかよくわかっていない(なんて恥ずかしくて言えない)人、聖書を読もうとしたけど挫折した人、教養を楽しんで身に付けたい人等々、必見の特集からいくつか抜粋してお届けいたします!

※聖書の解釈には宗派や学説によって諸説があります。

そもそもイエス様って何者だ?

 さて、まずはもちろんこの方の話をしなくてはなりません。我らが救世主、イエス・キリスト。もしかしたら古今東西、イエス様ほど多く絵画のモデルになった人って他にいないかもしれません。しかし、そもそもイエス様、すなわちイエス・キリストって何者!? 何がどうすごいの??

 まず何がすごいって、イエス様は神です。神なんです。これについては深く説明しようとすると分厚くてなおかつすこぶる難しい本が何冊も書けてしまうほどなのですが、それはさておき、たとえば世間で何かすごいことをした人に「マジ神!!」なんて言ったりする、そんなレベルではなく、とにかく本気で本物の神様なんです。

 天地をつくり、生命をつくり、海や山や星や月をつくった、全知全能の神様が、僕たちと同じように人間としての肉体を持ってこの世に生まれ、同じ環境で生き、一緒に食べたり飲んだり笑ったり泣いたりしてくれたということ。まず1つはそれがすごい! イエス様って、多くの人のイメージでは文字通りいわゆる「聖人君子」で、生活感もなければ喜怒哀楽もあんまり表に出さない人のように思われがちですが、実は「大食らいの大酒飲み」と呼ばれていたり、怒って「ちゃぶ台返し」をやったり、父なる神様に「もう僕、嫌です……」と弱音を吐いたりと、すごく人間くさいんです。「神様なのに人間くさい」、このギャップが多くの人たちに長く慕われている要因の1つなのかもしれません。

 そして何より人間の罪を代わりに背負って十字架で処刑されて、復活したということ。それはすなわち「人類を死から解放した」ということになり、この点こそ、何はさておき一番すごい!ということになります。大雑把に言えば、このことを信じるか信じないかがキリスト教徒かそうでないかの境目です。普通にはなかなか信じがたいことですが、このすごさがなければキリスト教って存在していないんです。

 そしてもちろん、イエス様は話す内容だってすごかったんです。「悲しむ者は幸いです。その人たちは慰められるからです」とか「求めなさい。そうすれば与えられます」とか、キリスト教にあまり親しみのない人でも知っているような有名な教えをイエス様はたくさん残しています。たとえ5万歩ゆずって、イエス様が神でなくただの人だったとしても、2000年もの間、その教えがのべ何百億人もの人の人生に強い影響を与え続けているなんて、やっぱりただ者ではないですよね。むしろ、神様でもない人がそんなことを成し遂げるなんて、そっちの方が奇跡なんじゃないかとさえ思えてしまいます。

 ……と、そんな規格外のすごい人ですから、そりゃ多くの画家さんたちだって描きたくもなるってもんです。描きたくもなりますし、昔は教会って今とは比べ物にならないほどの権力とお金がありましたから、教会から「お金はがっつり出すから、イエス様の絵を描いてくれ!」と頼むケースだって多かったんです。イエス様がいなかったら、美術史も今とはまったく違ったものになっていたでしょう。

 あ、ちなみに「キリスト」というのは名字ではなく「救世主」という意味です。ですから冒頭に「我らが救世主、イエス・キリスト」なんて書いてしまったのは「我らが救世主、救世主イエス」とか「我らがキリスト、イエス・キリスト」ということになってしまい、「白い白馬から落馬した」みたいな間違いなんです。

パンデミックがもたらすもの

 2020年は新型コロナウィルスのパンデミックが起こり、世界規模の騒ぎになりました。しかしこのパンデミックを「前代未聞の」とか「未曾有の」と表現することはできません。歴史をひもとけば人類はこれまで何回もパンデミックと戦っているんです。神様から見れば「君たち、これは前にクリアしたことのあるミッションでしょ〜?」って感じです、きっと。

 キリスト教史において最も衝撃的だったパンデミックはペストです。特に14世紀に起こったものでは、当時のヨーロッパの人口のおよそ3分の1、2500万人以上の方がこの疫病によって亡くなったとされています。これは絵画の歴史にも大きな影響を与えていて、これ以来、絵画に「死」そのものが描かれるようになりました。具体的に言えば、骸骨の姿をした「死神」です。日本語では「死神」と訳しますが、英語では“Death”であり「死そのもの」と訳した方が正確です。それまでは遺体を描くことはあっても、「死」そのものを描くことはそれほど多くありませんでした。ペストによってそれだけ「死」が人間にとってリアルなものとなったということです。毒薬のビンや海賊旗なんかにガイコツが描かれるようになったのには、そんな由来があるんです。

 そして「この疫病に対して教会は何もできないじゃないか!」という不満が人々のうちに生じ、これを機に教会の権威はだんだん失われ、やがてルネサンスや啓蒙主義の時代を迎えることになりました。今もこのパンデミックによってあちこちに「政治不信」が起こっていますが、それまでの時代の権威が失われるというのは今も昔も共通の、パンデミックの影響なのかもしれません。

 さて、パンデミックが起こると必ずと言っていいほど同時に増えるのが「困った人たち」です。現代で言えばカルト宗教や怪しい自己啓発団体などです。14世紀のペスト流行の時は「この病は神様からの罰だから、自分で自分を罰して神様の赦しを乞わなくてはならない!」と、鞭や刃物で自分の体を傷つける宗教が流行しました。また当時は「病原菌」という概念もなかったので、「これはあいつの呪いのせいだ!」とか「あいつらが毒を使ったんだ!」などのデマが流れて、私刑が行われたりもしました。デマもカルトも困ったものです。

 聖書には「世が乱れると『俺がキリストだ!神だ!』と主張する“偽キリスト”がたくさん出てくるから気をつけてね!」と書いてあります。「俺は神だ」とまで明言はしなくても、まるでそのように振舞う人、と言えば皆さんもそれぞれ何人か思い浮かべることができるのではないでしょうか。そんな時代です。気をつけましょう。

それぞれの道を往く!分派ヒストリー

 仏教に様々な宗派があるように、キリスト教にも様々な教派があります。日本で有名なのは「カトリック」と「プロテスタント」だと思いますが、世界的に見るともう1つ「正教会」という教派も非常に大きく、これら3つを合わせて三大教派と呼びます。
 この3つが分派した歴史をざっと解説します。イエス様の一番弟子であるペテロが立ち上げた教会は最初はもちろん分裂しておらず、1つでした。そしてローマ帝国の国教として発展します。しかしそのローマ帝国が、西暦395年に西と東に分裂してしまいました。この時に教会も西と東に別れました。この「西」が今のローマ・カトリックであり、「東」が正教会です。東西の教会はそれでも何百年かはお互いに認め合ってそれなりに仲良くやっていたのですが、それぞれ異なる文化の中にいましたから、次第に教義や形式に違いが生じてきました。そしてだんだんその違いが受け入れがたいものになってきて、1054年、双方のトップがお互いを「君たちはもう同じ宗教じゃない!」と破門しあい、これによって東西分裂が決定的なものとなりました。この出来事を「教会東西分裂」と呼びます。

 そしてその後、「西」のカトリック教会には有名なルターによる宗教改革が起こりました。この改革によって新しくできたのがプロテスタント、改革を受け入れずに従来の体制を維持したのがカトリックです。

 そんなわけですから「東が正教会、西が2つに別れてカトリックとプロテスタント」と、これだけ覚えておけばキリスト教について学ぶときに分かりやすくなります。教会建築や美術でも、三者はそれぞれに特徴がありますから、そんな視点で見ても面白いかもしれません。

 東の正教会はいわゆる「地方分権」的な組織を持ち、各地域のトップに権威を与えましたから、それぞれが「ロシア正教」とか「ギリシア正教」とか、その中に独立して存在しています。「○○正教」とあれば、とりあえず「ああ東なんだな」と考えていただければ良いかと思います。カトリックは基本的に中央集権の「トップダウン型」ですが、プロテスタントにはバプテスト、メソジスト、長老派……などなどたくさんの教派があり「ボトムアップ型」の構造を持っています。

 この三大教派が非常に仲の悪い時代もあったのですが、現代ではお互いに違いがあることは認識しつつ、概ね「まぁ、とは言え同じキリスト教ではあるから、協力できるところは協力しようね」くらいの関係になっています。上の方の偉い人の間では教派間での論争とかもありますが、一般の信徒レベルでは(少なくとも日本では)「難しいことは置いといて、とにかく同じクリスチャンだね♪」と仲良くしていることがほとんどです。

上馬キリスト教会twitter部 MARO「それ、聖書に訊いてみよう!」(オンライン配信イベント)
芸術新潮1月号「上馬キリスト教会twitter部presents 絵で見る、愉快な新約聖書キャラ列伝」刊行記念イベント

開催日時 12月17日 19:00~20:00

チケット情報
(1) 『芸術新潮』1月号(1500円)+イベント参加チケット:2100円
(2)イベント参加チケット:1100円
(3) 【神楽坂ブック倶楽部会員限定】『芸術新潮』1月号+イベント参加チケット:1900円
(4)【神楽坂ブック倶楽部会員限定】イベント参加チケット:900円

※『芸術新潮』1月号付きチケットをご購入いただいたお客様には、12月25日の発売日に発送いたします。
※海外在住の方はイベント参加のみのチケットをお買い求めください。申し訳ありませんが、本の郵送は日本国内に限らせていただきます。

 

Foresight 2020年12月10日掲載

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