リアリティーも過激度も断トツ…山口紗弥加「38歳バツイチ独身女」の不思議な雰囲気

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“濃い”ドラマの中身

 学習したチアキは次に役者志望の22歳【2人目】と会う。今度は初対面の時から「(アプリを)Hする用に使っていたら、ごめんなさい」と告げる。

 チアキは再婚を望んでいるわけではなく、ソウルメイトが欲しいのである。

 一方、役者志望君はキラキラと目を輝かせながら、ヤリモクではないと主張する。

「役者を目指しているし、こうやっていろいろな人と会ったり、いろんなところに行ったり、凄く勉強になるんです」

 なるほど、そういうアプリ利用法もあるかも知れない。だが、かなしいことにそれは大嘘だった。

 チアキが信用し、家に招き入れたところ、男は寝てほしいとせがむ。断っても聞き入れない。結局、6時間も粘ったので、チアキは観念して受け入れた。

 チアキは一定の警戒心を持つようになったものの、それでもモデル【3人目】、スポーツマンタイプの大男【4人目】たちと会う。

 その次の国立大理系大学生【5人目】は、居酒屋での初デートで「僕、就活の話がしたいんです」などと殊勝に話していたが、酒が進むうち、「チアキさんが絵を描いているところが見たい」と言い出す。つまり、家に行きたいということである。

 しぶしぶ家に連れて行くと、突然キスをされてしまう。毎度のことながら、やはりヤリモク。キスをされた途端、チアキもその気になる。

 けれど関係を済ませると、理系大学生君はチアキをブロック(マッチング解除)。これもアプリではよくあることらしい。チアキは自己嫌悪に陥る。そりゃあ、そうだ。

 26歳のWEBディレクター【6人目】はジェントルマンだった。チアキはホッとする。もっとも、多くの視聴者は「コイツもアカンだろ」と思っていたはず。

 会ったばかりなのに「年齢も結婚歴も気にしません」「次は友人たちにチアキさんを紹介したい」などと綺麗事や甘い言葉を次々と並べたからだ。

 案の定、次に出た言葉は「じゃあ、このままホテルに行きましょう」。チアキは良い人だと思い、求めに応じたが、その後、連絡がつかなくなる。

「やったら、もう戻れない。やらなくても戻れない」(チアキ)

 マッチングアプリの真実の一面を突いた言葉にほかならないだろう。いや、男女の出会い全般の一部を表すかもしれない。

 次に26歳のベンチャー企業社長【7人目】と会い、さら広告代理店に勤務する28歳【8人目】と出会う。

 広告代理店君は万事ソツがない男だった。学生らと違い、高級フレンチ店に案内し、会話もスマート。ただし食べ終えると、やっぱり「ホテルに行きませんか」。

 それでも、ほかの男とは違った。嫌なら何もしないと約束し、その言葉通りにベッド上でチアキを抱擁したまま。

 やがてチアキがその気になり、いざ行為が始まると、今度はチアキのほうが燃えた。

「なんだ、コレ」「人生一、気持ちいいんですけど」「これが相性ってヤツ? 好き同士でなくても相性が合えば、こんなに楽しいんだ」

 チアキは好き同士でないと性行為はしないものだという自分の考えをあらためる。

 ここまでが12月2日放送の第3話まで。毎回30分で、これほどまでに出会い、行為をしているのだから、中身が濃い。好き同士でなくても許されるという考えを持ったチアキは今後、ますます冒険するのだろう。

 過激だが、不思議と下品な感じはしないドラマだ。現代の出会いや性のリアリズムを追求しているだけで、欲情させようとしているわけではないからだろう。コミカルな味付けもよく利いている。

 現実離れした内容のドラマが多い中、アンチテーゼのような作品だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月9日掲載

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