吉村知事「トリアージ発言」の波紋 米国はガイドラインを作成、日本ではまず無理?

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「命の選別」を実施?

 大阪府の吉村洋文知事(45)の「トリアージ発言」が波紋を広げている。産経新聞が11月20日、「新型コロナ 大阪、救急病床を選別 知事、重症者向け拡充急ぐ」の記事を掲載、知事が《「大阪全体で救急病床のトリアージ(選別)をしていく」》と述べたと伝えた。

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 この「トリアージ」だが、デジタル辞書の「大辞林4.0」(三省堂)はフランス語で《選別・分類の意》と説明し、以下のように定義している。

《災害や事故などで同時発生した大量の負傷者を治療する際、負傷者に治療の優先順位を設定する作業。限られた医療資源で最大限の救命効果をもたらそうとするもの》

 映画に登場したトリアージの場面で、観客に強い印象を残したのは、「プライベート・ライアン」[S・スピルバーグ監督(73)・UIP]だろう。日本では1998年に公開された。

 第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦、オマハ・ビーチの戦闘で、アメリカ軍は甚大な被害を被る。

 銃弾が飛び交い、夥しい負傷者が横たわる海岸で、衛生兵が自らも戦死する危険性に直面しながら《負傷者に治療の優先順位を設定》していく。

 助かる確率が高い負傷兵だけを治療する。後は放置、悪く言えば見殺し──これがトリアージであり、行われていることは“命の選別”だ。

吉村知事が“命”を選別?

 命の選別という強いニュアンスも含む言葉であることから、扶桑社が運営するネットメディア「HARBOR BUSINESS Online」は、吉村知事の姿勢に疑問を投げかける記事を掲載した。

 11月23日、「命の選別『トリアージ』をすると宣言した吉村洋文知事。言葉の重みを理解しているのか?」の記事を配信。これは「選挙ウォッチャーちだい」氏の署名原稿だ。

 記事では、次のような疑問が投げかけられた。

《事故や事件などで大量のケガ人が出てしまった時に、全員の命を救うことが物理的に不可能で、このままではより多くの犠牲者が出てしまう時に、1人でも多くの命を救うための選択として行われるのが「トリアージ」です。本当だったら「トリアージ」なんていうことは考えない方がいいわけで、緊急の緊急で、本当にどうしようもない時に使われるものです》

 ところが府民にとって、この“命の選択”は決して他人事ではない。現在、新型コロナに罹患した重症患者を受け入れられる病床数が急速に減っており、重症者がベッド数を上回るという最悪の可能性も指摘されているのだ。

 24日、報道陣は吉村知事に対し、改めて「トリアージ」の意味を問う質問を行った。すると知事は「トリアージ」という言葉を、“命の選別”という文脈で使ったことは否定した。

 読売、朝日、毎日、産経といった大手全国紙は記事にしなかったが、デイリースポーツ(電子版)が知事の反論を報じている。

 24日に配信された記事「吉村知事『トリアージ』発言巡り『一部のアンチが』『命の選別とは全く違う。病床の最適化』」から、知事の発言部分だけを引用する。

《命の選別をするということではありません。命を守るために、適切な病床の、医療資源を配分していくこと。ここは誤解の生じないようにしていただきたい》

《一部で何か“命の選別だ”って言ってるアンチの人達がいますが、それは違います。僕が言ってるのは、“病床の最適化”“医療の最適化”。一部のネット上で“吉村が命の選別をしている”というのは、全く違う。ここではっきりと申し上げておきたい》

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