不倫妻3人の罪悪感、性欲を描く「恋する母たち」 イケメン部下に迫られる「吉田羊」は必見
秘すれば極楽、ハマれば地獄、貫けば純愛。それが不倫。知人の不倫話を聞く機会が意外と多い。たぶん私が前科者で拒否感がなく、否定や反対をしないから。すっかりご隠居となった今、人様の不倫話が実に面白い。予測不能なサスペンスであり、理性を失っている様はコメディでもある。肉欲の艶話もあれば、配偶者が戦慄のホラーと化すこともある。十人十色の愛の劇場は馴れ初めから知りたいし、登場人物の細かい情報も多角的に把握しておきたいので根ほり葉ほり聞いちゃう。
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そんな下衆なニーズにきっちり応えたドラマが「恋する母たち」である。演じるのは、木村佳乃・仲里依紗・吉田羊。三者三様の恋模様を同時進行で描くのだが、決して端折らず、かといって冗長でもなく、テンポよく惹きつける。濃く深く描くなら3人が最善だと改めて思う(テレ朝に告ぐ。7人は過多。秘書も刑事も)。
このドラマの長所は、母の矜持と罪悪感、女の性欲に真摯に向き合っている点。3人の母たちがそれぞれ道ならぬ恋を味わい、相手の男や夫、息子に揺れる感情を剥き出しにする。こっ恥ずかしさも後ろめたさも罪深さも切なさも恋しさも、女の業をまるっと炙り出す。
まず、佳乃の恋。最愛の夫(笑顔がそもそも人たらしな渋川清彦)が会社の金を横領し、若い女(勝ち気とアンニュイの兼業がうまい瀧内公美)と駆け落ちした挙句、崖から落ちて記憶喪失。己の罪と向き合うことなく、与論島でこれまた別の女とぬくぬく能天気に暮らす夫、というコテコテの悲劇に遭遇する佳乃。恋の相手は瀧内の夫・小泉孝太郎。要は駆け落ち不倫の被害者同士が懇ろの構図だ。
配偶者の裏切りに対する怒りで共感して性欲が高まり、1回こっきりの意趣返し不倫だったが、離婚後に再会して、恋に発展。独身になったとはいえ、後ろめたさはゼロではない。元義母の夏樹陽子から経済的援助を受けているため、新たな恋をしづらい状況である。
続いて里依紗の恋。夫は収入に比例して選民意識も高い弁護士(玉置玲央)。傍から見れば憧れのセレブ妻だが、心は空虚。なぜなら夫は新人弁護士(何もかもが憎々しい森田望智)と浮気三昧だから。そんなときに出会ったのが人気落語家の阿部サダヲ(どうやら恋愛猛者)。塩対応の後は猛烈なアプローチで、直球の愛を投げ込んでくる阿部に、徐々に心の穴を埋められていく里依紗。夫への復讐は正当防衛といえど、有名人との不倫には背徳感満載。
最後、最も心震わせるのが羊姐さんの恋。夫は作家志望の専業主夫(顔も声も適役の矢作兼)、大手企業で働く羊姐さんは一家の大黒柱。イケメン部下の磯村勇斗から愛欲を求められ、受け入れてしまう(性欲に正直)。羊姐さん、実は浮気の前科アリ。引きこもりの息子(奥平大兼(おくだいらだいけん))からは蔑視され、家に居場所がない状態。
後ろめたさも罪深さも追い込まれようもハンパない羊姐さん。観ていて最も心拍数が上がる「母の恋模様」だ。
それぞれが抱える恋心と罪悪感がどう着地するのか。鼻息荒くして見守っている。