韓国は「アグレマン」前に駐日大使を発表した 「北朝鮮一点買い」で延命図る文在寅

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「日米スクラム」破壊を狙う

――そこまでして日本を貶める動機は何でしょうか。

鈴置:それは簡単です。日米関係の破壊が目的です。D・トランプ(Donald Trump)政権時には、日米がスクラムを組んで北朝鮮の非核化に取り組んだ。半面、韓国は蚊帳の外に置かれてしまった。

 そこで、バイデン政権に代わるのを期に、日本を蚊帳の外に追い出そうと動き始めたのです。

――「日米のスクラム」はあまり知られていません。

鈴置:日本のメディアがちゃんと報じなかったからです。米国は先制核攻撃も検討していましたから、日本政府は「日米スクラム」をメディアに強調しなかった。むしろテレビは、韓国の影響下にある専門家が唱えた「日本蚊帳の外論」を大々的に報じた。

 実態は報道とは完全に異なりました。トランプ大統領が北朝鮮への武力行使も辞さない姿勢を打ち出すと2017年11月、安倍晋三首相は全面的に支持しました。

 口先だけではありません。安倍政権は2015年に安保法制を制定し、自衛隊と米軍の共同作戦の自由度を拡大していた。これが「日米スクラム」を確かなものとしました。

 同盟が深化する中、日本は米国に非核化と同時に拉致問題も解決するよう要請。それを受け入れた米国は核・拉致が解決した際には日本が北朝鮮を経済支援するよう求めました。

 だからトランプ大統領は2018年6月1日、米朝初の首脳会談の直前に「核問題が完全に解決すれば、北朝鮮への経済支援を日本などに求める」と表明。いざ、金正恩委員長に会った際には拉致問題の解決を強く求めたのです。

 一方、文在寅大統領は就任前から「米国が先制攻撃する際には北朝鮮に通報する」と公言していました(『米韓同盟消滅』第1章第1節)。それでは先制攻撃になりません。裏切りそのものです。

 米朝首脳会談の後は非核化が進んでもいないのに、対北援助に動きました。それを米国から止められると文在寅大統領は欧州を回って賛意を取りつけようとしましたが、各国からきっぱりと拒否されてしまった。この頃から「文在寅は金正恩の使い走り」との認識が世界に広がったのです。

警備陣に阻止された文在寅

 文在寅政権は国民には「我が国が運転台に座っている」と繰り返し宣伝してきましたが、次第にその嘘がばれてきました。2019年6月に板門店で米朝の首脳が会った際、文在寅大統領は割り込もうとしました。

 が、米国の警備陣に阻止されました、その光景がテレビに映し出されたので「本当のこと」を知ってショックを受けた韓国人も出ました。

 決定的だったのは、トランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)を2018年4月から2019年9月まで務めたJ・ボルトン(John Bolton)氏が退任後に『The Room Where It Happened』を上梓したことでした。

 ボルトン氏はこの本で、トランプ政権が安倍政権と息をピッタリ合わせて北朝鮮問題に取り組んだと強調。半面、文在寅政権は金正恩政権の使い走りと見なしていたことを明らかにしたのです。

 文在寅政権とすればバイデン政権の登場はやり直すチャンスです。とりあえずはバイデン政権に日本の悪口を吹き込み、自分の地位を上げたいところです。

 バイデン大統領は人権や環境の重視を打ち出していますから、慰安婦や福島第一原子力発電所の処理水を問題化して言いつける可能性が高い。

 ただ、日韓慰安婦合意はバイデン氏が副大統領時代に仲介役を務めたので、約束を破った韓国とすれば下手に持ち出すと藪ヘビになりかねない(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 福島の処理水も「危険」と主張するのは世界で韓国だけ。結局、「大使のアグレマン拒否」を活用したくなるでしょう。

水面下で動く日朝

――それにしても、これほどに外交的な無理を重ねてまで「運転台に座る」演出をせねばならぬのでしょうか。

鈴置:「日朝関係進展」への恐怖もあると思います。菅政権は拉致問題の解決に極めて積極的です。金正恩委員長との対話を公式に求めるほか、水面下でもパイプ作りに動いています。

 菅首相は就任早々の10月18日から21日まで、ベトナムとインドネシアを訪問しました。その際、北朝鮮と関係が深い両国政府に金正恩委員長へのメッセージを託した模様です。

 2週間もたたぬうちに、北朝鮮が動きらしきものを見せました。金正恩委員長が11月1日、朝鮮総連に送った祝賀文に以下の1文があったのです。「我が民族同士」の「金正恩同志が「総聯分会代表者大会―2020」(新たな全盛期第3回大会)の参加者に祝賀文」(11月2日、日本語版)から引きます。

・日本の人民との友好・親善活動を能動的に繰り広げて、在日同胞社会の存立と発展に有利な対外的環境をもたらさなければなりません。

 金正恩委員長のメッセージに「日本人民との友好」をわざわざ盛り込んだのは、菅首相の対話呼びかけに対する肯定的な返答と見ることもできます。

 文在寅政権としては見過ごせません。日朝が直接対話に動けば、朝鮮半島を巡る駆け引きで韓国はますます「蚊帳の外」に追いやられるからです。ここは何としても、日朝の間に割って入るしかない。

 11月中旬に突然、韓国が東京五輪や拉致被害者を人質にして日本に「南北米日」首脳会議を開かせようと動き始めたのはそのためでしょう(「蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに」参照)。

 2017年秋から冬にかけて米朝の情報機関が水面下で接触し、首脳会談開催を模索した際、韓国が割って入ったのと同じ構図です。

 この時も韓国は自分が仕切って初の米朝首脳会談が実現したとのイメージを世界に振りまきました。それに騙された日本の研究者が「日本は蚊帳の外論」をテレビで言って回ったわけですが。

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