韓国は「アグレマン」前に駐日大使を発表した 「北朝鮮一点買い」で延命図る文在寅
韓国政府が「知日派の駐日大使を送る」と発表した。その裏を韓国観察者の鈴置高史氏が読む。
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「見え透いた罠」に固執
――韓国政府が駐日大使を替えます。
鈴置:次期大使に内定したのは姜昌一(カン・チャンイル)氏。東洋史の研究者で、東大で修士・博士号を取得した知日派です。4回当選の国会議員で、韓日議員連盟の会長も務めました。現在はその名誉会長職にあります。
――行き詰った日韓関係を打開するための人事、ということですね。
鈴置:韓国政府はそう説明しました。中央日報の「文大統領、新駐日大使に姜昌一韓日議員連盟名誉会長を内定」(11月23日、日本語版)によると、青瓦台(大統領府)報道官は11月23日に内定を発表した際、以下のように語りました。
・菅内閣の発足を迎え、対日専門性と経験、長期にわたり築いた高官級ネットワークを生かして、ふさがった韓日関係のもつれを解き、未来志向的に両国関係が進むきっかけをつくるものと期待する。
――では、関係は改善するのでしょうか?
鈴置:しないと思います。韓国政府に日本との葛藤を解決する意思がないからです。11月23日にKBSのインタビューに答えた姜昌一氏は以下のように語っています。
・GSOMIA(軍事情報包括保護協定)と輸出規制は同時に解決し、(強制徴用問題は)交渉テーブルに載せ、交渉テーブルに載せた瞬間に他の問題は保留することもできるのではないか。
「新駐日大使の姜昌一『GSOMIAと輸出規制は同時解決』」(11月23日、韓国語、動画付き)で読めます。
実にムシのいい主張です。米国に叱られて交渉カードとして使えなくなった「日韓GSOMIA破棄」を再び持ち出して、輸出規制――日本の対韓輸出の管理強化をやめさせようとの作戦です。
さらには「徴用工問題」を日韓両政府の正式な交渉議題と認めさせることで、植民地支配が合法だったとの日本の立場を崩すことも狙っています。
韓国最高裁の「いわゆる徴用工判決」の骨子は「不法な植民地支配に対し賠償せよ」ということです。この判決を巡る話し合いのテーブルに日本を座らせれば、その瞬間に韓国は「不法な植民地支配だったことを日本が認めた」と言い出すでしょう。
韓国は世界指導者、日本は先細り
――見え透いた罠ですね。
鈴置:韓国政府の従来の作戦そのままです。デイリー新潮の「蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに」で説明した通り、あまりに見え透いた罠なので、いかに日本政府がぼうっとしていても引っ掛からないと思います。
――日本にパイプを持つ姜昌一氏を大使にすれば、無理筋の話でも押し込めると考えた?
鈴置:知日派だから上手くいくとは限りません。むしろ逆効果になることが多い。20世紀終わりまで、韓国人は肩身が狭い思いをしていた。国力に圧倒的な差があったからです。
しかし21世紀に入って差がなくなると韓国人は「日本など大した国ではない」と考え、日本人の前で肩をそびやかすようになった。日本と日常的に接し、平均的な韓国人以上に肩身の狭い思いをしていた知日派は、ことにその傾向が強い。
当然、日本を露骨に見下す韓国人には日本人も好意を持ちません。韓国人のふんぞり返る様を見て、馬鹿にする日本人も増えています。
今回の人事の発表前の9月に姜昌一氏は聯合ニュースTVに出演し、以下のように語りました。「日本、菅時代開幕…姜昌一・前議員に聞く韓日関係」(9月18日、韓国語、動画付き)から発言を拾います。
・韓国はすでにとても高い文明世代に替わり、IT文明が到来し、もはや世界指導者の地位に就いた。日本は先細りだ。そんな現状認識に変われば菅の対韓政策も変わるのではないか、こんな期待をしています。
菅首相は世界指導者の韓国を仰ぎ見よ、とのお達しです。大使として日本に赴任した後の、首相表敬が注目されます。
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