上野樹里主演「監察医 朝顔」 異例づくしの「月9」が見せた“進化”

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1年たらずで続編、しかも2クール連続

 甚大な被害、想定外の喪失、今もなお続く不安。2011年の東日本大震災を経験した人々は、手に手を取り合って「前を向いて頑張ろう」とした。それはとても大切なことなのだが、前を向けない人もいる。現実を受け入れられない人もいる。2011年3月11日から時が止まってしまった人もいる。そんな人の思いを決して置き去りにしないドラマが「監察医 朝顔」(フジ)だ。

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 主人公は東日本大震災で母が行方不明になった女性。母の遺体は見つかっていない。

 来る日も来る日も遺体安置所を訪ねて、母を探した経験が「監察医」という職業につながっている。

 それでも母が消息を絶った地に足を運ぶことができず、一種のPTSDになっていた。それが、上野樹里が演じる万木朝顔だ。

 同じ喪失感を異なる形で抱えているのは、朝顔の父・万木平(時任三郎)。刑事という職業柄、多忙を極めるものの、休日には必ず妻が消息を絶った地を訪れる。妻の遺体や遺品を探すためだ。

 周囲からは「前を向いて歩いている人がいるのに当てつけだ」「自己満足にすぎない」と言われる。

 それでもやめない。時が過ぎ、人々の意識も、景色も、どんどん変わってゆく被災地で、妻を探し続けている。

 この父娘の思いを軸にしながら、朝顔の恋と結婚と子育てを駆け足で入れ込みつつ、監察医という仕事の特異性を描いたのが、2019年のシーズン1。

 1年たらずで続編を放送。しかも2クール連続、つまり半年放送し続けて、震災から10年がたつ3月11日を迎える形だ。異例といえば異例の「月9」である。

「会いたい」「明日なら会える」

 真摯な作品だし、上野樹里のくしゃっとした泣き顔は確実に涙を誘うこともわかっている。

 とてもいいドラマなのだが、「今期イチオシ!」と気軽に手放しで絶賛できない壁がある。

 とにかく心が清い人々の物語だからだ。そりゃ文化庁芸術祭に参加しちゃうわなと、心が汚れた私は思っちゃうわけで。

 父娘の喪失感にそっと寄り添うことができたシーズン1とは異なり、続編には視聴者を飽きさせないフックもある程度必要だ。しかも長丁場だし。

 そこで、いろいろと考えたんだろうな。毎回終わり際に、それとなく視聴者の心をざわつかせるよう(SNSで話題になるよう)仕掛けてきやがった。

 おかげで少し茶化しやすくなったというか、気軽にツッコミを入れられるようになったのである。

 第1話の終わりでは、上野に「家族に残された時間がそう長くはない」と語らせた。家族が別々に暮らすということなのか、それとも誰かが亡くなるのか、と匂わせた。

 朝顔は再び喪失感を味わうのかと切ない気持ちにさせたのである。

 第2話では、朝顔の夫・風間俊介が自宅に帰ると、なぜか時任が勤務する野毛山署強行犯の係長(戸次重幸)がいる。

 しかも朝顔に濡れた髪をタオルで拭いてもらっているという、どうにもありえない構図。え、何のプレイ?

 第3話では、朝顔が電話で東北の地に住む祖父(柄本明)と話すシーン。「黙っていたことがある」という。

 柄本が仏壇に隠していたのは、ひとつの臼歯だ。

「朝顔の母(石田ひかり)の歯が実は見つかっていたのか?」と憶測を呼ぶ。

 柄本が体調不良という匂わせも。正直、私は「これは奥歯で親知らずかな」ぐらいにしか思わなかったが、この後詳しく描かれるのだろう。

 そして、先週の第4話では、風間が「聖奈」という女性らしき人物と、なにやら怪しげなショートメールのやりとりをしていた。

「会いたい」「明日なら会える」といった文言で、「すわ、不倫?!」と思わせた。

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