杉下茂が魔球“フォーク”を多投しなかった理由 味方から「一人で野球やるな」と言われて(小林信也)

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 杉下茂が日本で最初に投げ始めた頃、フォークボールは「魔球」と呼ばれた。ドラゴンズ・杉下といえばフォークボール、それが代名詞。ところが、杉下の自伝を読んで仰天した。

〈ワンバウンドになるような球は、どんな打者だって打てないに決まっている。打者が打てない球を投げるなんて卑怯なピッチングではないか。そんな気持ちが、心の隅っこにあった。〉

 そう書かれている。だから最初はほとんど投げなかったと。杉下の潔さに胸を衝かれた。1925(大正14)年生まれ、すでに95歳。...

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