電通の“社員の個人事業主化”に応募殺到 社員の反応は?

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 非正社員を正社員として雇用するといった話は普通にあるが、広告代理店の電通が打ち出したのはその逆。現役社員を業務委託契約に切り替え、個人事業主化するという驚きの人事策だ。

 電通広報部によると、

「人生100年時代に働き続けられるよう、独立を支援する会社を発足させました。個人で始めた仕事は年齢に関係なく続けられることを踏まえた新制度です」

 適用者は部門にかかわらず40代以上の社員約2800人から募集され、電通を早期退職したうえで、新会社「ニューホライズンコレクティブ(NH)」と業務委託契約を結ぶ。以後はNH社で新規事業を行うもよし、電通の仕事を請け負うもよし。電通の業務と競合していなければ、他の会社とも業務委託契約を結べる。

 報酬は、電通時代の給与の5、6割ほどとなる固定報酬のほか、NH社の業務で発生した利益から一定割合が配分される。自ら獲ってきた仕事ならば100%個人収入となる。契約期間は最長10年で、この間に完全な独立を目指す。

 早期退職を促す“人件費抑制策”とも映るが、電通はあくまで「リストラ策」ではないと説明する。

「この制度は、まさに40代の“ミドル社員”ら数名の議論から始まりました。エイジレスな働き方を検討、模索していくなかで、2年かけて会社を説得、新会社設立に漕ぎつけたのです」

 応募者は230名ほどで、営業職、クリエイティブ職など偏りなく分布していた。

「私も、リストラ策だとは受け取りませんでしたね」

 とは、電通OBでコラムニストの前田将多氏。

「数年前から電通は、既存のビジネスモデルからの脱却を模索していました。要は新しい食い扶持を探すのに必死なのです。今回の制度は社員を個人事業主化し、新しい事業を見つけてもらい、上手くいけば分け前に与(あずか)ろうという、なかなかのアイデアだと思います」

 では、社内での評判は? さる社員いわく、

「会社は100名程度の応募を見込んでいたようなのに、フタを開ければ実際はその倍以上。コロナ禍で広告市況は低迷し、給料増も期待できないなか、いま会社を辞めれば早期退職で加算金を受け取れ、10年間は固定報酬も保証される。さらに起業のチャンスまである。生涯賃金を計算したら、あらビックリ、新制度の適用を受けたほうが得だよ、と判断した人が多かった」

 他業界にも伝播するか。

週刊新潮 2020年11月26日号掲載

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