「文大統領」の「厳正に捜査せよ」は嘘…その嘘を信じた「韓国の検事総長」の受難

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「ファイト!」と叫んでいた民主党から非難

 一方の保守野党は、同氏の人事を認証する段階で、妻側家族の不正問題を取り上げて反発。与党・共に民主党は同氏を保護し、7月25日、ようやく文大統領は検事総長任命状を授与するに至った。

 総長就任の折に文大統領は「青瓦台であれ、政権与党であれ、生きている権力に不正があれば、厳正に捜査せよ」と述べたが、尹総長はこれが後に嘘だと明らかになるなど、そのときは思いもよらなかった。

 尹錫悦総長は昨年8月、文大統領の最側近である曺国前法務長官と家族の不正疑惑捜査を開始。

 暴けば暴くほど新しい疑惑が出てくる「タマネギ」の捜査に取り組んで曺前長官の妻と甥を拘束起訴した。

 曺前長官の妻には、娘の大学入試不正と証拠隠滅、不法な方法を利用したファンド投資など11の容疑が適用された。

 逮捕状を審査する裁判所も、証拠隠滅を防ぐための身柄拘束を認め、妻は逮捕された。

 その後、尹総長は、曺国前長官に対する捜査を進め、昨年12月、業務妨害、職権濫用、収賄、公職者倫理法違反など12の容疑で起訴した。

 捜査過程で不正容疑が明らかになった文大統領の側近である公務員や大統領府の高位公職者、共に民主党議員を公職選挙法違反などの容疑で起訴し、現在、裁判が進められている。

 それから、ジョークのように見えるが、一向に笑えない状況がやってくる。

 半年前まで「尹錫悦ファイト!」と叫んでいた共に民主党が突然、尹総長を非難しはじめたのである。

 共に民主党所属の国会議員は例外なく「権力闘争をしかけている」「尹総長の解任建議案を提出すべきだ」と尹総長を攻撃、「尹総長はただ文大統領の指示通りに捜査をしただけだ」と総長を擁護した党員は、いじめのような非難を浴びて離党した。

総長に指揮権を発動した法務部長官

 そして、あろうことか共に民主党は、検事総長人事の検証過程で保守野党がかつて取り上げた尹総長の夫人側家族の不正問題を蒸し返し、親・文在寅性向のメディアも加担して、尹総長を糾弾するのだ。

 尹総長は、問題は結婚前に起きたことであり、自分とは全く関係がないと何度も反論したが、共に民主党側は聞く耳を持たないままだ。

 サプライズはまだ続く。

 今度は保守野党が「生きた権力を厳正に捜査しろという嘘を信じてしまっただけ」と尹総長を“被害者”のように擁護し、次期大統領選挙の候補として迎え入れようとしている。

 政治なのかお笑い番組なのか。

 文在寅大統領は今年1月、共に民主党国会議員の秋美愛氏を法務部長官に任命した。

 秋長官は就任一週間後、検察人事を発表し、尹錫悦総長の側近と捜査チームの検事たちを地方検察庁に左遷した。

 新任のソウル中央地方検察庁長には文大統領と同じ大学の出身で、かつての盧武鉉政権に青瓦台で文大統領の同僚だった李成尹(イ・ソンユン)検事を起用した。

 今年8月にも検察人事を行い、同じように尹総長の側近を左遷して、現政府を肯定する検事を重要職に登用した。

 秋長官は日本でもよく知られた元朝鮮人従軍慰安婦関連団体「正義記憶連帯(正義連)」の寄付金流用疑惑で起訴された尹美香(ユン・ミヒャン)共に民主党議員に対する捜査指揮部も交代。

 以後、正義連の捜査は遅々として進捗していない。

 秋長官は、共に民主党議員の前で尹総長を侮辱する発言を行い、さらに尹総長に特定捜査に介入するなといわんばかりに、検事総長に対する直接捜査指揮権を発動した。

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