防衛省「馬毛島」買収、45億円の島が160億円に化けた裏側 菅総理、加藤官房長官が関与か

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115億円が上積みという謎

 これら全ては馬毛島の売買が成立したからこそ動き始めたわけだが、この件に関する最大の謎は160億円という売買金額である。何しろ、17年に防衛省が出した土地評価額は45億円。それから売買仮契約が交わされる19年1月までの間に115億円が上積みされたわけである。その背景には何があったのか。

「当初、防衛省はリッチ社に対して『根拠のない国費の支出には応じられない。増額できるとしても100億円を超える額には応じられない』との立場を崩さず、勲氏側も売買代金が200億円を下回ることは容認しない、と主張。18年10月までは交渉は平行線のままだった」

 事情を知る関係者(前出)がそう明かす。

「そこでリッチ社が『売買代金額180億円であれば責任をもって勲氏を説得する』と申し出たところ、防衛省側から『売主の一本化を条件に150億円を超える売買代金を検討する』との回答が寄せられた」

 その後のやり取りについて、リッチ社側は件の訴訟で次のように明かしている。

〈媒介報酬及び被告(勲氏)グループ会社の既存債務の完済ならびに譲渡所得税納付の為には160億円の売買代金額が必須であることを防衛省に説明して粘り強く交渉した結果、同年(18年)12月26日に内諾の連絡を得た〉

 そして、この〈粘り強い交渉〉があったとされる18年10月から年末までの間に、前述した通り、リッチ社は加藤氏と4回、和泉洋人総理大臣補佐官と3回の面談を重ねているのだ。

買収金額を“工作”

「“どのように土地鑑定評価をしても45億円がせいぜい”と主張する防衛省を押し切り、勲氏が勝手に作った滑走路の建設コストを無理に上乗せして160億円という買収金額を工作したのが、菅さんの意を受けた和泉補佐官と、加藤さんだったと見られている。菅さんが加藤さんを官房長官に抜擢したのはその論功行賞もあったのでは」

 と、永田町関係者。いみじくもリッチ社が提起した裁判の証拠資料がそれを裏付けた形だ。

「ちなみに買収が完全に済んだ後、今ある滑走路は撤去されて改めて政府が建設することになっています。無駄なものを価値あるもののように算定したおかげで、血税120億円が消えた、と言えるでしょう」

 売買の立場は逆とはいえ、「森友疑惑」同様のきな臭さが感じられるのだ。

「18年には、不透明な価格算定が行われたのと同時に、タストン社に対して相次いで第三者破産手続きが取られており、リッチ社も6億円の返済を迫り、立石建設本社ビルに極度額10億円の根抵当権を設定。こうした動きを裏で焚きつけていたのは防衛省だった、とリッチ社は裁判で明かしていますが、菅さんや加藤さんも当然、無関係ではないでしょう」(同)

 国側の目的は、

「のらりくらりと交渉を先延ばしにする勲氏の排除です。実際、18年10月15日には債権者の申し出を受けて勲氏がタストン社の社長を退き、次男の薫氏が代わりに就任している」(同)

 そして、薫氏が社長を務めていた19年1月に仮契約にこぎつけたわけである。しかし、160億円での契約に納得がいかない勲氏は2月にタストン社の社長に返り咲く。「中国系企業に売る」として4月に防衛省に対して交渉打ち切りを通告したが、

「11月上旬、債権者から『11月末までに馬毛島を売却しない場合社長解任に追い込む』と通告され、防衛省との交渉を再開します。この債権者の背景にも防衛省の存在があったことが分かっています」

 と、事情を知る関係者(前出)が明かす。

「結局、馬毛島の一部、約4万坪の土地をタストン社が持ち続け、その土地評価額を約4億円とし、増額もあり得るとの『プラスアルファ』を国側から引き出したことで納得し、11月末の売買予約契約に至りました。勲氏としては一部土地を持ち続け、今後の開発工事に関わりたいとの狙いがあったのでしょう」

「赤字になる可能性も」

 一連の経緯について取材を申し込んだところリッチ社の社長はこう回答した。

「(取材申し込み文には)『加藤長官の口利きにより160億円での売買仮契約が締結された』とお聞きになられたとありますが、被告株式会社タストン・エアポートからお聞きになられたということでしょうか。弊社代表者は、故加藤六月氏と親交があり、そのご縁で加藤勝信長官とも面識を得ておりますが、馬毛島取引に関して何らかの謝礼をお支払いしたという事実はございません」

 一方、加藤氏の事務所は、

「ご指摘の土地は、防衛省が交渉に当たり、売買に至ったものと承知しております。また、パーティー券等の政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告しているところです」

 勲氏に近い関係者は、

「リッチ社への支払いが島売買による税金から出ていることを突かれると……そうですね、そういった批判はあると思います」

 とした上でこう語る。

「結局、当初の試算では160億円でこれまでの債権は整理できる予定だったのですが、リッチ社から仲介手数料を求められている件もあり、赤字になる可能性も出ているようです」

週刊新潮 2020年11月19日号掲載

特集「『利権の島』に血税120億円が消えた! 防衛省『馬毛島』買収に暗躍した『加藤勝信』官房長官」より

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