「利権の島」買収の裏に「加藤官房長官」 “口利き”面談記録も
「ちょろちょろさせるな」
また当時、タストン社の勲氏は沖縄を地盤とする下地幹郎代議士にも交渉の窓口を依頼していたようで、「下地先生なら菅官房長官のハンコをもらえる」、つまり馬毛島の売買をまとめられる、とリッチ社の役員に伝えている。しかしリッチ社役員らはそれを一蹴し、次のように話している。
リッチ社役員「押さないって言ってんじゃん、だから。菅さんは」
勲氏「言ってるんですか?」
リッチ社役員「言ってますよ。下地の話は聞かないっつってんだから」
リッチ社関係者「もう(菅さんに)会ってるんだよ、みんな」
リッチ社役員「なんで自民党が維新の会のハンコ押すんですか?」
リッチ社関係者「だから下地があんまり動いているようだから早くしろよ、と(机たたく)」
リッチ社役員「ちょろちょろさせるなって言われてるんですよ。下地クラスを」
それでも勲氏は「下地ルート」を諦めきれないようで、こう食い下がる。
勲氏「その下地の話は本当にだめなんですか?」
リッチ社役員「だめですよ。何回も言うけど。いや、だから、借りてくればいいじゃない、下地がお金用意するつったら」
勲氏「あの人は金はできないけど、ハンコさえもらえばと言うんですよ」
リッチ社役員「だからもらえないっつってんだから」
勲氏「菅さんからですか?」
リッチ社役員「600回言いますよ、もう、600回言ってますよもらえないって。なんで下地の書類に菅さんがハンコ押すんですかって」
リッチ社関係者「話になんねーな」
契約前に何度も加藤氏と面談
この反訳書以外にもう一つ興味深い証拠がリッチ社側から提出されている。馬毛島売買の仲介行為に関する「面談記録」(画像参照)。それを見ると、専属専任媒介契約が交わされた2日後の6月2日、リッチ社は、当時は内閣府特命担当大臣だった加藤勝信官房長官の議員会館で秘書と面談している。一方、タストン社側は「勲氏が手帳に記したメモ」を証拠として提出しているが、6月2日のメモには〈弁ゴ士より議員会館に提出〉とある。つまり同日、リッチ社は交わしたばかりの専属専任媒介契約書を加藤氏の事務所に届けたとみられるのだ。
さらにその2年後の18年10月25日から12月28日にかけて、リッチ社は4度も議員会館で加藤氏本人と面談している。また、菅総理の懐刀で、週刊文春に「コネクティングルーム不倫」を報じられた和泉洋人総理大臣補佐官とも3度面談している。タストン社と防衛省が馬毛島の売買仮契約を結んだのは19年1月9日。その直前、リッチ社は加藤氏と和泉氏に頻繁に面談を重ねていたことになるのだ。
「馬毛島に関しては、長らく防衛省とタストン社の勲氏が売買交渉を続けてきましたが平行線を辿るばかりだった。そこで途中から菅総理が『菅案件』として馬毛島案件を抱え込んだ。18年7月には菅総理本人が勲氏と会っていますが、主に現場で動いたのは和泉補佐官でした」(政府関係者)
リッチ社と加藤氏の関係
では、リッチ社と加藤氏はいかなる関係なのか。
「リッチ社と加藤さんの義父、故加藤六月元農水相は古くからの親しい間柄で、それが勝信氏に引き継がれたと聞いています」(同)
両者の関係を間近で見てきた勲氏にも話を聞きたいところだが、同氏に近い関係者はこう語る。
「勲さんは昨年11月に正式に馬毛島の売買が決まって安心してしまったのか、今年に入ってから一気に体調を崩してしまいました。元々80代とは思えないくらい若々しいというか元気な人だったのですが、急に年相応以上になった」
リッチ社と加藤氏の関係については、
「一体視していました。勲さんはリッチ社を加藤さんの『関連会社』と言っていました」(同)
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