バイデン当選で「尖閣」が危ない 台湾支配の加速か

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 最悪のシナリオを覚悟すべきだと識者は警告する。東アジアにおける「対中防波堤」とでも言うべき台湾、そして日本。両者にとって、バイデン政権下で起き得る具体的な悲劇や如何に。

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 まず拓殖大学海外事情研究所教授の川上高司氏は、

「バイデン氏は、トランプ氏とちがって分断よりも協調を選ぶでしょう。つまり旧来の国際秩序を重視する。そしてオバマ政権時代の、研究費に中国マネーが流れ込んでいたような親中的シンクタンクがバイデン政権のブレーンに返り咲くでしょうから、それも考えると、中国に対する姿勢は徐々に融和的なものになっていくと思います」

 と、改めてバイデン政権の対中姿勢を分析した上で、こう懸念する。

「その結果、米国からの圧力が低下することにより、習近平氏はこれまで以上に台湾の中に親中派を増やそうと躍起になり、台湾内部での中国化工作を強めていくでしょう。そして将来的には、暗黒法ともいわれた香港国家安全維持法のようなものを、台湾にも作ろうとする可能性があります」

 要は、台湾が中国に呑み込まれてしまう「暗黒時代」が想像されるわけだ。

 産経新聞ワシントン駐在特派員で麗澤大学特別教授の古森義久氏も、

「台湾に冷たいスタンスを取ってきたオバマ政権下で、8年間副大統領を務めたのがバイデン氏です。彼は台湾に思い入れがないのではないでしょうか」

 として、バイデン政権の台湾政策を不安視しつつ、「その先」の重要問題についてこう警戒するのだった。

「トランプ氏は、尖閣諸島は日米安保条約の適用の範囲内だと明確に言っていました。しかし、バイデン氏は尖閣諸島に関してなにも言及していません。そもそも、民主党の元副大統領のモンデール氏が駐日大使時代、米軍が尖閣諸島を守る責務はないと明言したように、伝統的な民主党のカラーからしてもバイデン政権が尖閣諸島を守ろうとする可能性は低いでしょう」

 また、福井県立大学の島田洋一教授はこう指摘する。

「バイデン氏は民主党内で大統領候補の座を争ったサンダース氏と、大統領になった暁には極左のサンダース一派を政権中枢に入れる『密約』を交わし、応援を取り付けたともいわれています。そのサンダース一派は、『米国の軍事力は自国の防衛以外の目的で行使してはならない』と考えている。バイデン氏が彼らに引きずられると……」

 さらに、川上氏が後を受けて危惧するには、

「東アジアにおける安全保障の要といえる台湾が中国化してしまうと、物理的に中国本土よりも台湾のほうが尖閣諸島までの距離は近いわけで、尖閣諸島に対する中国サイドの脅威が一層強まる恐れがあります。それはすなわち、尖閣の先にある東京などの安全保障上の危機が高まることを意味します。そうなると、中国との対立を避けたいバイデン政権は、在日米軍の撤退すら考えるかもしれない。日本にとって危機的状況が訪れかねないのです」

 香港、台湾、尖閣諸島、そして……。

 以上が、識者が案じる「負のドミノ現象」という悪夢である。これが予知夢でないことを願うばかりだ。そんなことは、努々(ゆめゆめ)あってはならない。

週刊新潮 2020年11月19日号掲載

特集「『トランプ大逆転』がまだある最終シナリオ」より

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