3年間の不倫が妻にバレた46歳 「残りの人生、ずっと針のムシロなのか」の苦悩

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SNSで妻にバレ…「今すぐ電話をかけて別れて」

 だが1年前、ヒサノリさんは突然、妻からスマホを突きつけられた。

「なにこれって。それはユキのSNSのページでした。愛する人と一緒というタイトルで、ユキが作った料理と一緒に僕の腕がぼんやり映り込んでいるんです。場所はユキの部屋でした。たぶん、誰にもわからないと思ったんでしょう。だけど僕の肘の裏側にある、しみのようなほくろがしっかり写っていた。妙な特徴があるので妻にはわかったんでしょう」

 妻は夫のスマホもしっかりチェックしていた。彼が寝てから指紋認証でスマホのロックを解除していたらしい。ユキさんの名前も住所も把握していた。

「人のスマホを勝手に見るなんて最低だなと言ったものの、これだけ証拠があると言い訳もできません。ユキの“匂わせ”にも腹が立った。だけどすべて自分が蒔いた種ですからね……」

 妻は静かに「離婚しますか」と言った。まさかそんなことは考えていないと答えたものの、そうか、離婚するという手もあるのかとヒサノリさんはぼんやり思ったという。

「とにかく、ことを荒立てないためには謝るしかない。妻の顔を見たら、目の下にクマを作っていて。うまくいっているとは言えないけど、それでも憔悴した妻を目の前にして、真剣に謝りました。すると妻は、『今すぐここで電話をかけて彼女と別れて』と。午前1時くらいですよ。息子は爆睡しているから起きないだろうけど、相手にだって迷惑だよと言いかけて、妻の形相が普通でないことに気づきました」

 ヒサノリさんは彼女に電話をかけ、「もう会えない。ごめん」と言った。小声で「詳細はまた」と電話を切ると、妻は黙って彼を見つめ、自室に入っていった。

「翌日、仕事帰りに彼女に会って、すべて正直に話しました。匂わせのことも。彼女を責めるつもりはなかった。ただ、もうどうにもならないことをわかってほしくて。彼女は黙って席を立つと、目の前のコップの水を僕の頭からかけて去っていきました」

 ドラマのようである。ハンカチで水を拭っていると店の人が温かいおしぼりをもってきてくれた。泣きそうになりましたよと彼は自嘲的につぶやいた。

今も針のムシロは続く

 あれから1年。このコロナ禍においても、彼は仕事柄、毎日出勤していたので、妻と息詰まるような空間を共有しなくてすんだ、それだけは助かったという。

「ただ、ずっと針のムシロは続いています。妻とはほとんど会話がない。僕の食事も作らないし洗濯もしない。そう決めたそうです。息子とはふたりだけで話しました。お父さんは過ちを犯した、と。コロナで家にいた息子は、いろいろ考えたみたいですね。離婚するのかと聞かれたので、離婚はしないと答えました。意外と冷静に受け止めてくれて、『まあ、このコロナ禍で大決断はしないほうがいいよ』と慰めてもらいました(笑)。今年から高校生になったけど、なかなか登校できなかった息子はすごく読書をしていたようです。人生いろいろだよね、と言うのでつい笑っちゃいましたけど」

 妻にも離婚するつもりはないと告げたのだが、妻はときおり「もう、ホントにいや!」と急に叫び出したりする。コロナ禍で妻にもストレスがたまっていたのだろう。9月からパートに復帰、今回はあまり愚痴も言わずに勤めているが、言わなくなったのは夫に聞いてもらいたいと思わなくなったからかもしれない。

「息子は学校生活を楽しんでいるようです。ユキはコロナ禍で在宅勤務になり、どうやら同じ部署の同世代の男性とつきあっているみたい。社内で噂が流れていました」

 家庭内別居状態がいつまで続くのかわからない。だが最近、ヒサノリさんは時間があると料理をするようになった。先日、妻に勧めると一口食べた。だが、夫の顔を見てため息をつく癖は相変わらず続いている。

 息子は父の料理を作る姿をおもしろがっている。子は鎹(かすがい)、息子に力を借りて妻との関係を再構築できないかと、ヒサノリさんはチャンスを待っている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月22日掲載

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