ツイッターでバズった「島根の醤油屋」の悩み 増産を意気込むも周囲からの反対で

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 島根県松江市に「やすもと醤油」という醤油製造販売店がある。

 従業員は社長とその奥さん、息子とその奥さん、そして息子の同級生の5人。そんな小さなお醤油屋さんもコロナで打撃を受けた。

 安本隆政社長(58)が語る。

「当初は、旅館や飲食店が閉まった影響で、昨年同月と比べて売り上げが1割減ってしまいました」

 妙案はないものか、とため息を漏らしていると、息子の同級生氏が手を挙げた。

「社長、ツイッターでもやってみますか。僕に任せてください」

 こうして、やすもと醤油はツイッターを始めた。

 8月下旬のある日、同級生氏はこうツイートした。

〈うちのアカウントを見た上司と同僚が「フォロワーが40人もいて、いいねもたくさんついててメッチャバズってるじゃん!」と言っていました。〉

 すると、これが〈ほんわかした〉〈かわいい上司〉とネット上で大きな話題に。フォロワーは1日で6万人に増えた。ちなみに上司は社長、同僚は息子氏である。

 公式販売サイトにも2日で700件もの注文が殺到した。しかし、

「新しいお客さんも大事ですが、昔からのお客さんはもっと大事です」

 そう考えた社長は、ネット販売を中断し、通常の販路を守った。そして4人のパートとともにシルバーウイーク返上で醤油を作った。

 ひと月が過ぎ、9月の売り上げは前年比3倍増になった。翌月も衰えることはなく、パートを3人補充した。現在はネット販売を再開している。

 そんな中、県による設備投資補助金交付募集の話を耳にした。“500万円のラベル包装機を買えばもっと増産できる”と考えた社長だったが、周囲から、

「ツイッターなぞ一過性のもの。今に注文もパタッと止まってしまうぞ」

 と諫められているそうだ。

「でも、主力の“くんせいナッツドレッシング”は一度食べたらクセになる、という人もいるし、“お米だけでつくった日本生まれのおいしいドレッシング”も女性を中心にリピーターが多い。どうしたものか……」

 と悩み続ける社長。新規客よりお得意を優先するあたり、堅実経営とお見受けしたが、はたして結論は?

週刊新潮 2020年11月19日号掲載

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