退団の内川聖一、球団との確執が原因か 王会長の恩情にも応えず

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 常勝時代を支えてきた球団の功労者にしては何とも寂しい最後だった。2軍の試合で退団を発表したソフトバンクの内川聖一(38)は、まるで「ポイ捨て」のごとき扱いだったが、その陰で王貞治会長や球団との間で確執が囁かれているという。

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 11月1日、福岡県筑後市の球場を訪れていた王会長の表情は強張(こわば)るばかりだった。その日、内川が試合に出場した後のスピーチで「ソフトバンクのユニフォームを着るのは最後になる」と退団を明言したのだ。

 野球担当記者の解説。

「退団について球団の正式発表は翌2日。つまり、本人の発表と球団発表が前後してしまった異例の形でした。しかも、1日のスピーチでは今季一度も1軍に上がれなかったことを指して、“1打席もチャンスをもらえなかった”と恨み節まで披露。球団も寝耳に水でソフトバンクとの間に何かがあったことは明白でした」

 野球解説者の張本勲氏は、

「選手が先に退団を表明するのはあまり見たことがないねえ。俺も辞めると球団社長に伝えた時は『待て待て』と言われたからね。一度トップに立った選手の引き際は難しいな」

 移籍して10年で訪れた別れ。もともと、工藤公康監督の起用法に内川が不満を漏らしていた、と語るのは球団関係者だ。

「工藤さんは2015年に就任早々、内川を4番に起用しています。しかし、内川自身は長打を求められ、バッティングが崩れた、と嫌がっていたんです。また、一昨年の日本シリーズでは移籍して以来初めてバントを指示された。そうしたことの積み重ねで“工藤監督のもとで野球をやりたくない”と話すようになっていったのです」

 とはいえ、今季は2軍で3割以上の打率を叩き出していた。それでも1軍に上がれなかったのは、

「内川は良くも悪くも感情を表に出す選手。ある時は三振した後にベンチ後ろのコンクリートの壁をガンガン殴っていた。いまのソフトバンクは若手が台頭していて、気性の荒いベテランを引き上げて雰囲気が崩れることに工藤さんも躊躇していた。内川からすれば“なぜ上がれないのか”と思っていたはずです」(同)

「本人に質した」

 退団に傾いた内川に手を差し伸べようとしたのは、王会長その人だった。

「シーズン中に“もう退団する”と漏らした内川に、王さんは“そんなことを言うものじゃない”と諭していました。しかし、内川は不貞腐(ふてくさ)れるばかりで態度を改めようとしなかった。さらに、シーズン終盤には再び王さんが“現役続行か引退どちらにするのか”と本人に質していました。続けるなら球団に残ってもいい、という王さんの恩情だったのに、明確に回答しないまま、練習を続けていた。王さんの配慮をことごとく袖にし、顔に泥を塗った格好なんです」(同)

 これにはさすがの球団も怒り心頭だと、この関係者が続ける。

「王さんへの対応はうちの幹部の逆鱗に触れ、“なんだ、あいつは”となっています。それに加え、王さんが見に行った最後の試合で、今度は勝手に退団を発表してしまった。このことで、将来的にうちの監督になる可能性はなくなったも同然です」

 コトの真偽を当の内川本人に直撃すると、

「監督を始め、球団に挨拶も済んでおらず、いまお話しできることはありません」

 王会長との件を尋ねても、「失礼します」と言うのみ。

週刊新潮 2020年11月19日号掲載

ワイド特集「遅れてきた請求書」より

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