”連れ去り”の闇、3年間、毎月19万円を妻に払い続けても我が子に会えない男の苦悩
「家裁の不作為が私と子供を引き裂いた」
彼が特に疑問視するのは、調査員調査が9月に行われた点である。
「11月に調停を申し入れてから9カ月もの間、父子は引き離された状態にありました。当然、父親不在の家庭が常態化してしまいます。子供たちは、唯一そばにいる親を大事に思うだろうし、母親がパパと会うと苦しいと言えば、当然、母親の肩を持つでしょう。彼らは幼い子供です。大人の顔色を窺い、本音を言えるとも限りません。後で勉強して知ったのですが、イギリスでは別居が始まると、すぐに調査官を派遣するそうです。そして、6回も聴取を繰り返し、子供の心身状態をあらゆる角度から検証し、『片親疎外』が起きていないか調査するのです。私は家裁の不作為が、私と子供たちを引き裂いたと思っています」
片親疎外とは、同居親が子供に不適切な言動などを取ることで、別居親との関係が破壊されることだ。
現在は、妻側が起こした離婚裁判が続いているが、
「もし離婚が成立してしまえば、親権は妻側に行ってしまうでしょう。裁判所は『監護の継続性』といって、いま現在、妻と暮らし続けていることだけを重視します。結局、日本の司法制度は、“連れ去り勝ち”を許してしまっているのです」
「離婚弁護士」は子供から父親とお金を奪う
野崎の怒りの矛先は、家裁だけではない。妻の背後で絵を描く、弁護士に対する憤りはもっと激しい。
「離婚が成立したら、弁護士は財産分与の10から20%を成功報酬として得られるシステムになっています。さらに、彼らは養育費からも成功報酬をかすめ取ります。実は私は、子供たちのためにもこれ以上、争い続ける意味もないだろうと、一度、財産分与700万円、親権なし、面会交流なしで和解を提案しました。しかし、妻の弁護士は安すぎると、1500万円を要求してきたため、裁判が継続することになったのです」
野崎は語気を強めて続ける。
「弁護士は何がなんでも私たちを離婚させ、高額な報酬を得たいのです。面会交流も絶対に反対します。万一、元鞘に戻ってしまったら、お金が取れませんから。彼が妻に付くまでは、妻は子供を会わせていました。彼が付いてからは、シャットアウトです。妻の弁護士はホームページで『離婚弁護士』と名乗り、実績を誇示している。私は彼の神経が、到底理解できません。子供から父親を奪うことの、どこが成功なのでしょうか。彼の成功報酬の原資は、私たち夫婦が子供のために働いたお金です。彼は子供から、父親もお金も奪おうとしているのです」
では、妻に対する思いはどうなのか。
「もちろん、言いたいことがないわけではありません。でも、人間同士が交わる以上、感情のもつれが生じるのは致し方のないこと。妻にも言い分はあるでしょうし、当然、責任は両方にある。ただ、だからといって、なぜ父と子が引き離されなければならないのでしょうか。私は、妻ではなく、この制度が憎いのです。そして、その制度の狭間で、金儲けを企む離婚弁護士たちが許せません」
同様の思いを抱いているのは野崎だけではないという。野崎は様々な当事者の会に参加し、500人以上と話してきたが、最近は子供に会えない母親も増えている。11月11日には日本で6件目の単独親権による被害を訴えた国家賠償請求が提訴された。いずれも法改正を求めるものだ。野崎もその内の一つに加わっている。
「本当のところ、私自身の問題はもう、どうにもならないと諦めかけています。でも、この不条理を経験した当事者として、次の世代にこの問題を残したくない。連れ去り被害は、いつ誰にだって起こりうる話です。私の子供たちも同じ目に遭うかもしれない。彼らのためにも、私は制度を変えたいのです」
[4/5ページ]