【米大統領選】日本なら一晩で終わる開票作業 なぜそんなに時間がかかったのか
やっと、当確──。アメリカ大統領選でCNNやABCなどは11月8日、日本時間の午前1時すぎ、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)が当選確実と速報した。
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思えば長い道のりだった。11月6日に放送された「NHKニュース7」(毎日・19:00)の冒頭、瀧川剛史アナ(39)は「まだ、勝者は決まりません」と切り出した。
投票日は11月3日。しかしながら日本時間の7日午後18時になっても、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、ネバダ、アリゾナ、アラスカの6州で大勢が決していなかった。
なぜ、これほど時間がかかるのか──SNS上では疑問の声が相次いだ。Twitterからご紹介しよう。
《日本だったら、遅くとも寝て起きたら全部開票終わってるのに、アメリカは遅いなー》
《アメリカ大統領選において、「開票速報」はないよな。どんだけ遅いんだよ》
《「アメリカの開票が遅い」のではなく、「日本の開票システムが優秀」だという話》
Twitterでは《現地の開票作業員が遅い時間だから帰宅した》という出典不明の解説が拡散した。真偽を調べてみると、これは事実だった。
CNN(日本語電子版)は11月4日、「殺到する郵便投票、勝敗のカギ握る4州で集計遅れる 訴訟も開始」の記事を配信した。(全角英数を半角に改めるなど、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)
“生産性”と逆の結果
文中には、《いくつかの州は夜通しの作業を中止して翌朝の再開を決めた》との記述が確かに存在する。日本では参議院選の開票作業が遅くなることが多く、特に比例選で未明までの作業が続くのとは極めて対照的だ。おそらく、一晩徹夜したくらいでは作業が終わらないのだろう。
ビジネス記事に目を通す人なら、「アメリカのほうが日本より生産性が高い」との報道が多いことをご存知だろう。最近ではNHKが9月18日、「“デジタル技術を活用し 低い労働生産性の向上を” 日本生産性本部が初の白書」との記事を配信している。
日本生産性本部が《日本の1時間あたりの労働生産性が主要7か国の中で最も低い》という白書を公表したという内容だ。
《白書では、労働者がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す日本の労働生産性は、2018年は1時間あたり、4744円で、アメリカの60%あまりの水準》
生産性の低い日本は、国政選挙でも深夜までに大勢が判明するスピードを誇る。一方、生産性が高いはずのアメリカでは、大統領選の投票から3日間が経過しても、いまだに開票作業が続く州が存在する。
日本の選管は勤勉?
これでは理屈に合わない。実は日本のほうが生産性は高いのではないか、と考えたくなるが、ここで1つのことに思い至る。GAFAを代表とするIT、航空、金融といった産業では世界をリードするアメリカも、サービス業のレベルは極めて低いという事実だ。
アメリカで生活したことのある日本人がブログなどで、以下のようなリアルな体験談を披露している。
「引っ越し業者の仕事があまりに雑で呆れた」
「家にいたのに宅配業者が、なぜか不在と判断して持って帰るのはしょっちゅう」
「カスタマーサービスの担当者が『折り返しの電話をします』と言って、電話がかかってきたためしがない」
どうやらアメリカ人はサービスや事務作業が苦手らしい。「日本人は出張のため航空券の手配を2日で済ませたが、アメリカ人は1か月かかった」とのエピソードを披露しているサイトもあった。
日本における宅配便のサービス内容は、世界でもトップクラスと言われる。煩雑な事務作業もこなしてしまう。そして全国の選挙管理委員会も、サービス業に匹敵するような努力を重ねている。朝日新聞(電子版)は2010年7月、「開票作業『早く』そして『安く』 知恵絞る各地の選管」の記事を配信した。
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