卓球界の伝説「荻村伊智朗」道場破りの日々と世界で受けた差別(小林信也)

  • ブックマーク

「この卓球場には、誰か強い人がくるんですか」

 やせっぽちの高校3年生、荻村伊智朗が訪ねて来たのは1950(昭和25)年9月末。卓球経験のない主婦・上原久枝(当時30歳)が東京・吉祥寺の自宅を改装し「武蔵野卓球場」を開いて10日ばかりの頃だった。

 荻村といえば、毎年日本で開催されるワールドツアー「荻村杯」に名を遺し、米中国交回復の礎となったピンポン外交の仕掛け人ともいわれる卓球界のレジェンドである。

 そんな荻村が、その日の思いを、同卓球場40周年記念誌にこう記している。...

つづきを読む