「裏アカ」で性的な告白、ゲームに廃課金 親は知らない「スマホ」の怖さ
コロナ禍は経済や社会活動への影響のみならず、子どもの生活にも影を落としている。学校は3カ月近く休校となり、再開後も分散登校や学校行事の中止など混乱がつづく。
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勉強や進路の不安。友達と気軽に遊べない。部活動の試合ができず目標を見失う。そんなストレスからオンラインゲームやSNSにのめり込み、トラブルを抱える子どもも少なくない。
「息子のゲーム依存が心配です」と嘆息するのは、中学2年生の長男と暮らす母親(45)だ。
シングルマザーで仕事を掛け持ちし、休校中は子どもに留守番させる毎日だった。孤独な“ステイホーム”のせいか、長男はオンラインゲームに没頭。最後に生き残ったプレイヤーが勝者となるバトルロワイヤルゲームに、1日15時間を費やしたという。
「自室にこもりゲーム三昧でした。食事はゲームをしながら簡単に済ませ、部屋から出るのはトイレと入浴のときだけです。ゲーム内のバトルで興奮するのか、奇声を上げたり、壁にペットボトルを投げつけたり。私が注意すれば口論になり、親子で殴り合いのケンカをして警察を呼んだこともありました」
長男は一時昼夜逆転に陥り、学校再開後も生活リズムを取り戻せていない。勉強そっちのけで深夜までゲームをやめられず、眠気を解消するためのエナジードリンクを手放せなくなった。
オンラインゲームに詳しくない人でも、パチンコや飲酒に置き換えれば、連日15時間もつづけることの異様さはわかるだろう。昨年5月には世界保健機関(WHO)が、ゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を疾病と認定。ギャンブル依存症などと同じく、精神・行動の障害だと位置づけた。
健康上だけでなく、犯罪に巻き込まれるリスクもある。9月には横浜市に住む9歳女児が、オンラインゲームを通じて知り合った男(38)の自宅に監禁される事件が起きた。女児は「親のスマホを借りていた」というが、今や低年齢の子どもでもゲームを通じた出会いが日常になりつつある。こうした事件では、犯罪者が言葉巧みに被害者に接近する。たとえばゲームで使う装備品などのアイテムを「プレゼントする」と持ち掛ける。フレンドリーな態度で安心させたあとに、「お礼」として顔写真を送るよう要求したり、実際に会う約束を取り付けたりする。社会経験が未熟な子どもほど「親切な人」だと疑わず、意のままに操られてしまうのだ。
それにしても、なぜ子どもはオンラインゲームに熱中するのか。
理由のひとつが「ソシャゲ」の流行だ。
ソシャゲはソーシャルゲームの略称で、プレイヤー同士がインターネット上でゲームを同時進行し、友達になったり、チームを組んで闘ったりする。遊びながら人との関係性を得られるので、興奮や感動は大きく広がる。
ゲーム仲間と競えば闘争心が湧く。自分のキャラクターがレベルアップすれば、他のプレイヤーから賞賛される。戦闘系ゲームでチームを組むと、先発隊や後方支援などの役割を与えられる。
ひとりでスマホやパソコンを操作しているようでいて、実際には他者とコミュニケーションを取り、楽しさを共有できるのだ。
「ソシャゲは仲間との絡み(つきあい)がおもしろいし、ボイチャがあると盛り上がります」と話すのは、愛知県の男子高校生(18)だ。
彼が言う「ボイチャ」とはボイスチャットの略称で、プレイヤー同士が「声」で会話する。
「基本はゲーム関係の話が多いけど、『今、何してる?』みたいな日常会話もあります。チームを組んでいる場合は、作戦を練る戦略会議とか、戦闘が終わったあとの反省会とか、熱い議論になったりしますよ」
もともとオンラインゲームでは、文字でやりとりするチャットが使われていた。それが「声」に変わったことでコミュニケーションが容易になった。会社で言えば、メール交換の打ち合わせからZoomのリモートミーティングに変わったようなものだ。
「廃課金」の悪循環
意思疎通がしやすい一方で、ボイチャならではのトラブルも少なくない。
「小学生くらいの声で、『死ね』、『ぶっ殺す』なんてフツーにあります。熱くなるのはわかるけど、自己チューなガキが増えてとにかくウザい。対戦相手が女子の声だったりすると、変にナンパする男がいたりして、場がしらけることもあります。チーム内の会議も結構面倒ですね。リーダーからノルマを振られても、声で断るってやりにくいので」
“ノルマ”と聞いてもピンとこないかもしれないが、これも問題のひとつだ。
ソシャゲ内でチームを組み団体戦を行う場合、メンバー同士の協力が必要になる。戦力の低いメンバーがいるとチーム全体に影響するため、「明日までに〇ポイント獲得」といった強化ノルマが課せられる。
同調意識が強い日本の子どもは、「仲間に迷惑をかけられない」などと思い込みやすい。
ノルマ達成のために長時間ゲームをつづけたり、「廃課金」と呼ばれる高額な課金をして、有料アイテムを大量購入したりする。時間やお金をつぎ込むほど、「これまでの努力を無駄にできない」という心理状態に陥り、ますますゲームをやめられない悪循環だ。
ボイチャのような「声」でのコミュニケーションはSNSにも及んでいる。
「トークアプリ」や「ボイスSNS」と呼ばれるが、要は利用者同士がランダムにつながり、匿名で会話できるシステムだ。90年代に流行したテレクラ(テレホンクラブ)のアプリ版とも言えるが、特に10代の人気を集めている。
「クラスの女子は半分くらい使ってますよ」
と話すのは、千葉県に住む女子高校生(17)。
2年前から週に1、2度は利用するという。
「ヒマつぶしにちょっと誰かと話そうかって使い方もできるし、友達と一緒にいたずら半分でやることもあります。『キモイ人に当たった』とか、話のネタにするとみんなにウケるんです」
ツイッターやインスタグラムなどのSNSも利用するが、「やっぱり会話できたほうが楽」だと笑う。
「テキストメッセージ(文章の投稿)は微妙なニュアンスが伝わらない。LINEのグループトークでも、ちょっとした言葉を誤解されてハブられる(仲間はずれになる)ことがあります。でも、ボイスSNSなら、相手の声から年齢や雰囲気がわかりやすい。話がおもしろいとか、優しそうな人だと『会ってもいいかな』って気持ちになるんです」
実際に会ったことはないという彼女だが、その理由は「話した相手が遠くに住んでいたから」。逆に近くの人なら、「今から会おう」と会話が弾み、ノリに任せて行動するというわけだ。
動画投稿サイトのユーチューブには、ボイスSNSで会話する様子を撮影した動画投稿が散見される。ランダムにつながる際の反応が生々しく映し出されるが、こうしたリアリティ動画も最近の流行だ。
とりわけ人気を誇るのが、前述したソシャゲでの戦闘映像を配信する「ゲーム実況」だ。プレイヤーが勝ち残っていく状況が生中継されたり、攻略法が明かされたりするため、展開が気になって延々視聴する子どもも多い。
埼玉県の女子高校生(16)はコロナ自粛以降、自宅でユーチューブを見る時間が増えたという。音楽やお笑いのライブ配信、アニメ動画などを視聴してきたが、ここ最近ハマっているのが「告白動画」だ。
「失恋したとか、お金がないとか、個人の打ち明け話もあるけど、ダントツでおもしろいのは美容整形の告白動画です。一般人の女子が、整形前、手術中、入院生活、退院後という感じで、リアルな顔出しをするんです。術後の様子とかをイッキ見して、友達とSNSで盛り上がる。『傷が怖い』、『腫れがすごい』って、もう“祭り”状態ですよ」
整形前後の変化だけでなく、かかった費用や周囲の反応まで明かされる。
プライバシーを切り売りするような動画だが、意外にも彼女は「応援したくなる」と言う。
「自分の素をさらして、明るく生きるためにがんばってるわけでしょ? 私や友達が祭り状態になるのは、告白動画に自分を重ねるからだと思います。自分じゃできないけど、“この人スゴイよ”って感じで、つい見たくなるんです」
ありのままの姿に共感できるというのだが、思春期のような感受性の強い年頃では、思わぬ行動につながる場合もある。
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