「カツカレーまん」は日本料理で大騒動……英「料理番組」で分かった日本食の認知度

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“レイシズム”との批判も

 こうした傾向は街角のレストランにも反映される。やはり中華料理店と韓国料理店に勢いがある。おまけに中国人や韓国人は、ちゃっかり和食の店も経営し、日本料理の需用も取り込んでしまう。こうしてイギリス人は、ますます日本料理とアジア各国の料理を混同していく──。

 確かに「ベイクオフ」は、日本料理に対する無知をさらけ出したのかもしれない。だが、イギリスにおける日本のイメージを映した“鏡”であるのも事実だという。

「『ベイクオフ』は結局、“カワイイ”と“アニメ”を柱に番組を制作しました。視聴者が喜ぶはずという計算はあったと思います。和食に対する誤解や無知も、究極的には在英大使館のPR不足が原因かもしれません。特に日本の大衆料理に関する宣伝は不足していると思います」(同)

 一方で、木村氏にとって嬉しい動きもあった。メディアやSNSなどで、相当数のイギリス人が「あれが日本料理というのはおかしい」と批判したことだ。

 木村氏は自身の記事で、番組を批判した高級紙「インディペンデント」の見出しを紹介している。「無知で人種差別主義。日本ウイークで批判されたブリティッシュ・ベイクオフ」というもので、原文には“レイシズム”の単語が使われている。

大使館も“参戦”すべき

「番組に対する批判はかなりの数に上りました。興味深かったのはSNSでイギリスに住む中国人も『中華まんは我々の文化だ』と発信し、イギリス人の誤解を是正していたことです。イギリス世論の底力というものを実感できた、いい機会になりました」(同・木村氏)

 日本とイギリスは今年10月、「日英包括的経済連携協定(EPA)」に署名した。両国議会の承認手続きを経て、来年1月の発行を目指している。これは追い風と言っていいという。

 また日本政府はイギリスをヨーロッパにおける情報発信基地と位置づけ、多額の税金を投入している。例えば2018年、ロンドンの超高級ショッピング街に「ジャパン・ハウス」をオープンした。中に入るセレクトショップもレストランも完全な高級路線だ。

 木村氏は「次こそ大使館の出番だと思います」と指摘する。高級路線も大事だろうが、イギリスの庶民に日本の食文化を知ってもらう好機が訪れたのだ。

「せっかく『ベイクオフ』がこれだけ話題になったのです、在英大使館が中心になって日本人パティシエなどに依頼し、『本物の和風中華まん』や『本物の和風抹茶ミルフィーユ』『本物のKAWAIIケーキ』を作ってもらい、PRしてはどうでしょうか。なかなか粋だと思いますし、話題になるのは間違いないと思います」

週刊新潮WEB取材班

2020年11月4日掲載

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