「カツカレーまん」は日本料理で大騒動……英「料理番組」で分かった日本食の認知度
和食の知識は皆無?
木村氏が言う。
「番組は基本的に、事前のオーディションを通過した12人の素人が登場します。プロの料理人はいません。毎週、『ケーキ』や『ビスケット』、『チョコレート』といった課題が課せられ、調理と審査の結果、1〜2人が番組を去るのがフォーマットであり、そこから生まれる人間ドラマが人気です」
「10月27日放送分のエピソード6は、テーマが日本食です。参加者を募集します」と事前に告知され、出演者は1回登場して終わりという番組だったなら、和食が得意な素人も登場したかもしれない。
だが、「ベイクオフ」の場合、エピソード1に12人が登場すれば、後は減っていくだけである。木村氏は「12人全員に“和食”の知識がなかったとしても、全く不思議ではありません」と指摘する。
「『ベイクオフ』は“お化け番組”と言えるほどの人気です。イギリス全土から出演希望者が殺到します。そして出演者の顔ぶれについて、番組側はリアルなイギリス社会を反映させようとしているのでしょう。日本人にとって“イギリス人”と言えば白人をイメージするかもしれませんが、番組にはアフリカ系、カリブ系、イスラム系といった移民の人々も登場します」
そもそも“素人料理”
イギリスで寿司や天ぷらはポピュラーな料理だ。しかし移民の人々には、異なる認識もあるだろう。それが《日本風のKAWAIIケーキ》となれば、“難易度”は更に上がるに違いない。
「ロンドンでさえ、日本のお菓子となると簡単には手に入りません。いわゆる洋風の“スイーツ”でも、正統派の和菓子でも、目にすることは稀です。出演者は、日本人にすれば理解に苦しむケーキばかりを作りましたが、これは仕方ないと思います」(同・木村氏)
そもそも番組のコンセプトは、素人の“料理自慢”ということも忘れてはならないだろう。写真で紹介したのは、番組公式サイトに掲載された料理だ。27日の放送に登場した一品で、その名も「デイブのニワトリ型カツカレーまん」という。
「『蒸しまん』の課題は原文で『steamed buns』。要するに『肉まん』や『豚まん』といった『中華まん』です。イギリスでも中華料理は人気で、点心の店もたくさんあります。皮の部分を口が開くようにして、ハンバーガーのようにチャーシューを挟み込んだ『チャーシューまん』は庶民にも人気があり、誰もが気軽に口にします。これを日系スーパーや系列のラーメン店は日本食の『平田バンズ』として売り出しています」(同)
現代ビジネスは2月2日、イギリス情報ウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」の江國まゆ編集長が執筆した「イギリスで日本の『カツカレー』が“国民食”になっている驚きの理由」の記事を配信した。
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