コロナ×インフルの「ツインデミック」は起こらない? インフル陽性者が激減という事実
両方とも流行らない
前出の矢野氏は、
「いまインフルエンザの陽性者数は、昨年と比較して減っていて、これからも新型コロナとの同時流行は起こらないと思います」
と言って、続ける。
「オーストラリア、チリをはじめ南アメリカなど南半球の国々は、今年の冬にインフルエンザが流行しなかったのです。日本でも、夏に子どもに流行するヘルパンギーナや手足口病が流行りませんでした。マスク着用とアルコール消毒が効いているのではないかと思います。もちろん、新型コロナ対策に気を抜けば、インフルエンザが流行する可能性もありますが」
矢野氏はむしろ、ほかのことが心配だという。
「インフルエンザの検査をする際、患者が新型コロナにかかっている可能性を疑い、うつされることを恐れた医師が、検査もせずにタミフルを処方したりしないか、ということです。そんな子どもが学校の同じクラスに5人もいれば、実際にはインフルエンザが流行していないのに、学級閉鎖になってしまう。3月に“無駄な学級閉鎖”があっただけに、またそんなことになってはいけません」
先の宮沢准教授も、
「もし今年、新型コロナが流行したら、インフルエンザなどほかのウイルスは流行しないのではないでしょうか。一般に二つのウイルス性感染症が同時に流行することはないのです。今年はマスクを着用し手洗いを徹底するなど、みな気をつけているので、インフルエンザも流行らないと思う」
と、ツインデミックの可能性を否定する。仮にインフルエンザがそれなりに流行したとしても、対処できると説くのは、前出の唐木氏である。
「インフルエンザは例年、冬の2、3カ月の間に国内で1千万人ほどの感染者が出ますが、医療崩壊は起こりません。対策が普通の感染症に対するものの範囲にとどまっているからです。一方、新型コロナウイルスの感染者数は、まだ10万人にも届きませんが、仮に1千万人に達しても、インフルエンザと同じ対策にとどめているかぎり問題ありません。ところが、指定感染症2類以上にしたから、入院や隔離の必要が生じ、大変なことになっているのです。過剰な対策をするから、医療機関に負荷がかかるのであって、インフルエンザと同じ5類相当に変更すれば、そもそも同時流行を心配する必要もなくなります」
しかし、「過剰な対策」を許容している人も多い。
「日本では医療者の集団である専門家会議が対策を主導し、感染者ゼロを目指した。そして国民に自粛を求める際、“新型コロナは恐ろしい”“医療は崩壊の危機に瀕している”と恐怖を煽った。善意で行われたことですが、国民の多くが強い恐怖感を抱き、いまなお改善されていません」
と唐木氏。実は同様の傾向は欧米にもあり、だからヨーロッパはいま、対策に汲々としているのだ。
しかし、われわれは、
「日本では対策を緩める方向に動いていますが、それを続けていくのがいい。死亡者数は増えないようにしないといけないので、高齢者や合併症がある人を守りながら、経済を活性化していくことです」
という矢野氏の言葉を肝に銘じるべきだろう。
全体の死亡者数は減り、インフルエンザが流行る兆しはなく、Go Toキャンペーンが始まって3カ月経っても、感染者数は激増したりしない。マスクを着けて手を洗えば、インフルエンザも寄りつかない。何を怖れる必要があろうか。
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