「私達は実験台じゃない」 11月7・8日の東京ドーム巨人戦「観客8割」実証実験のナゼ

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横浜スタジアムも8割以上、スパコンを使ってすでに実験済み

 同様の実証実験は、10月30日~11月1日に横浜スタジアムのプロ野球、DeNA対阪神戦の3連戦でも、8割以上の観客を入れる形で実施された。

 実験では、感染防止に必要な観客のデータを集めるため、スタンドやコンコース、球場外周に13台の高精細カメラを設置。

 トイレや売店の混み具合、入退場時の人の流れを調べたほか、スタンド内の二酸化炭素濃度や風速計による空流のデータなどを用い、スーパーコンピュータで声援による飛沫の広がりなどの分析が行われたという。

 政府は、把握したデータを参考に、新しい技術の活用によって観客数が増えても感染リスクを下げられることが分かれば、分科会で人数制限の緩和を議論してもらうつもりのようだ。

 だが、横浜スタジアムで実施済みの実験を、わざわざ1週間後に東京ドームでまたやる必要があるのかという点でも疑問だ。

 日本プロ野球機構(NPB)関係者によると、巨人やNPBに対しては、「なぜこんな実験をやるのか」「横浜スタジアムで実験をやるんならドームはいらないだろ」「観客は実験台じゃない」といった苦情が相次いでいるという。

なぜ東京ドームで実証実験が行われることになったのか

 さらに、今シーズンの東京ドームは、他球場とは異なり、巨人戦では一貫してアルコール類の販売、持ち込みを禁じており、NPB関係者が「各球場、各球団のコロナ対策の取り組みをみると、東京ドームと巨人は際だって力を入れている」と評するほどだ。

 新型コロナ感染対策に相当な労力を費やしてきた巨人が、日本シリーズという大舞台を前に、クラスター発生等のリスクを抱えながら約8割もの観客を入れて実証実験を実施することに前向きとは考えにくい。

 では、なぜ東京ドームで実証実験が行われることになったのか。

 このNPB関係者によると、こうした疑問だらけの中でも東京ドームで実証実験が強行されることが決まった背景には、斉藤惇・NPBコミッショナーの日本シリーズに関する発言があるという。

 斉藤氏は10月19日に開かれたプロ野球とサッカーJリーグによる新型コロナウイルスの対策連絡会議において、横浜スタジアムで実証実験を実施することを歓迎した上で、11月21日に開幕する日本シリーズの観客数について「60%、70%、80%になれば嬉しい。できるだけたくさんの方が安全に入られるようにしたい」と観客数の上限引き上げに意欲をみせたのだ。

 このため、この時点でセ・リーグ制覇をほぼ確実としていた巨人サイドでも上限引き上げに向けた動きを、東京ドームでも実証実験するということがスピード決定したという。

 これが、集まらない観客を無理矢理にまで東京ドームに集めて実証実験を実施することになった、真の舞台裏のようだ。

 通常の公式戦は、ホーム球団が主催し、入場料収入などは主催者の収益につながる。

 日本シリーズは主催者がNPBなので、その主催者のトップにあたるコミッショナーの斉藤氏が、多くの観客に来てもらいたいという思いを抱き、先述の発言をした気持ちは分からなくもない。

 しかし、コロナ禍における今シーズンのリーグ戦は、無観客→人数5000人→収容人数の50%上限と慎重に段階を踏みながら実施されてきており、各球団は、プロ野球興行において最も大事な収益源となるチケット代収入を大幅に減らしながら、利益を度外視し、各試合を主催してきた。

 斉藤氏は、その各球団の苦渋の思いを本当に理解した上で、日本シリーズにおける上限引き上げに関する発言をしたのだろうか、コミッショナーとして自身の発言の重みを考えるべきだと批判されても仕方がないだろう。

 実証実験でクラスターが発生しようものなら、目も当てられない。

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