ノブコブ徳井が語る「千鳥はなぜ革命なのか」 ノブの“覚醒”、大悟の“可愛らしさ”

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千鳥最大の武器は「大悟の可愛らしさ」

 大阪時代からそんなふうだった千鳥さんは、いつの間にか関西地区では無双状態になり、その名を全国へ轟かすために東京に進出した。すぐに『ピカルの定理』という、僕らやピース、渡辺直美にハライチ、モンスターエンジンというメンバーでやっていたコント番組に合流することとなる。

 それまであまり千鳥さんと絡んだことのなかった僕は、会った初日の収録で千鳥というコンビのカラクリを知ることとなった。

『ピカルの定理』でやっていたコントは、ディレクターさんや放送作家さんが台本を書いてくれ、それを芸人が好きなように演じ、皆であーだこーだ言いながら作り上げていくスタイルだった。

 しかしその日の1本目、大悟さんが出るコントの収録はいつまで経っても始まらなかった。会議室で5時間くらいが経過し、結局大悟さんの出る予定だったコントの収録は中止することになった。スタッフ陣と大悟さんの笑いの折り合いがつかなかったらしい。なんて尖っているんだ、さすが千鳥。怖いなー、こだわり強いなー、僕が内心そう思っていると、「ようこそ千鳥」的なトークコーナーだけを撮影することになった。

 収録が始まっても、なかなか大悟さんは喋り出さなかった。周りを睨みながら腕を組んでいるだけ。

 鬼だ。北木島から船で江戸に鬼がやってきた。僕はそう思った。

 トークのラスト、ようやく大悟さんが口を開く。が、その声はとても小さくて何を言っているのか分からない。しかも、噛み噛みでもはや鬼の片鱗などない。

 スタジオは爆笑に包まれていた。あんなに怖い顔をしていたのに、まさか緊張していただけだったのか……。

 本番中だったが僕はなるほど、と膝を打つ。千鳥のカラクリとは、大悟さんのボケ力、ノブさんのツッコミ力、ネタの面白さ、二人の仲の良さ……もちろんそれらもある、けれど千鳥の一番の武器は大悟さんの可愛らしさなのだな、と思った。

 どうして千鳥さんが関西のおばちゃん方に猛烈に可愛がられ愛されているのか、たったの数分で知ることができた。この人は、とても可愛い。それなのに、可愛らしさを売りにしていない。人間を剥き出しにして、ちゃんと笑いと向き合っている。でもどうしたって可愛い。そりゃ売れるわ!

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