ノブコブ徳井が語る「千鳥はなぜ革命なのか」 ノブの“覚醒”、大悟の“可愛らしさ”
「大悟は一人でやった方がええんちゃうか?」
大悟さんは千鳥結成以前、元々は一人で芸人をやっていた。吉本とは別のインディーズのお笑い団体が大阪にあったらしく、そこには笑い飯を結成する前の哲夫さんと西田さんもいた。さすがの大悟さんは最初からその才能をメキメキと発揮し、笑いも取れるスターになっていった。
だが突然に、同級生を連れてきてコンビを組むと言い出す。その同級生というのがノブさんだ。
ここからすぐに二人の快進撃が始まるのかというと、そうではない。今まで舞台に出れば爆笑をかっさらい、人気もあった大悟さんが、あろうことかノブさんと漫才をした途端、ウケなくなってしまった。周囲は驚き焦ったが、大悟さんは何とも思わなかったらしい。
「大丈夫、俺らはおもろい」
そう信じて疑わない大悟さんの隣で、ノブさんの胸中が穏やかであろうはずがない。今まで面白いと評判だった大悟が、そうではなくなってしまったのだ。これは、自分に原因があるのではないか。
先輩方に相談すると、「大悟は一人でやった方がええんちゃうか?」「ノブおもろないなぁ」と、容赦ない言葉を浴びせられる。令和になって、やたら、何たらハラスメントみたいなことが頻繁に言われるようになったが、我々の若い頃は愛情ゆえの「かわいがり」が日常茶飯事だった。
「大悟のために面白くなりたかった」
僕ならきっとすぐに辞めている。もしくは、そのインディーズライブからすぐに抜ける。恥ずかしいし、相方に面目ないし、とにかく惨めだ。ただ、ノブさんは違った。真逆を行った。
「おもんない」「辞めろ」と何度言われても、先輩たちにつきまとった。それはノブさんが鋼のメンタルの持ち主だったからではないと思う。ノブさんに当時の心境を聞くと、
「大悟がおもろないわけないんやから、俺が面白くなるしかない。あいつの顔に泥を塗るわけにはいかない。プライドとか、恥ずかしさとか、そんなもんより俺は面白くなりたかった」
そんなことを言っていた。
これが40代の人間ならまだ分かる。でもまだ10代、自信満々でやってきた若者が飛び込むにはあまりにも灼熱の業火だろう。軽い火傷で済むような状態ではない。でも、そこに飛び込むことを、二人がそれぞれに迷いなく選んだ時点で、千鳥さんが売れることはもう決まっていたのだと僕は思う。
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