中国が「尖閣」を狙う本当の理由 「国防」の裏側と「自衛隊」のリアルとは 『空母いぶき』かわぐちかいじ×『邦人奪還』伊藤祐靖

国内 社会

  • ブックマーク

【緊急対談】かわぐちかいじ×伊藤祐靖 「国防」の裏側と「自衛隊」のリアル(1/2)

 海上自衛隊を描いた作品で大ヒットを連発してきた漫画家のかわぐちかいじ氏と、自衛隊初の“特殊部隊”創設に携わり、その経験に基づくドキュメント・ノベルを著した伊藤祐靖氏。中国の脅威が高まる今、それぞれのフィールドで「海の最前線」と向き合ってきたお二人に語り尽くしてもらった。

 ***

 後編はこちら

海上自衛隊員が全員読む漫画

伊藤(以下、「伊」) 漫画誌連載の締め切りが月5回というご多忙の中、この度はありがとうございます。

かわぐち(以下、「か」) いえいえ、仕事しかやることがないものですから(笑)。2年前に体調を崩し休載したのですが、そのときにそれがよくわかりました。月に6回の締め切りを5回に減らしてもらいましたが、仕事をしていないと落ち着かない。

伊 それでも、待っている読者は嬉しいと思います。私は現職のときに、まず『沈黙の艦隊』を読み、潜水艦が独立国になるというスケールの大きい物語に驚嘆しました。私は海上自衛隊に約20年おりましたが、最初の10年は護衛艦に乗って航海に出ることが多かったんです。いくつもの船に乗りましたが、『沈黙の艦隊』は、海上自衛隊の船乗りなら全員読んでいるのではというくらい、どの艦にもある常備品でした。

か 『沈黙の艦隊』の連載開始は1988年です。そのころはもう自衛隊に?

伊 はい。87年に入隊して、88年の春までは2等海士として、セーラー服を着ていました。

か 伊藤さんの自伝(前著『自衛隊失格』)によると、日本体育大学を出られて、高校教師に内定されていたところを辞退して、入隊された。

伊 そうです。大卒なら普通は幹部候補生学校を目指しますが、軍事や防衛について何も勉強していない私がいきなり幹部になるのはずるい気がして、一番下の2等海士、いわゆる水兵で入りました。

か そうなると江田島ではなく?

伊 横須賀にいました。横須賀教育隊を経て護衛艦「むらさめ」に1年間乗り、幹部候補生を受験しました。88年には江田島の海上自衛隊幹部候補生学校に入りました。

か その頃は私も40代と若かった。私は今でこそ自衛隊モノをよく描く漫画家となっていますが、自衛隊を最初に本格的に描いたのが『沈黙の艦隊』だったんです。自衛隊や旧海軍を扱った短い読み切りを何本かは描いていたものの、長い話での連載は『沈黙の艦隊』が初めてで。

伊 そうだったんですか。

か その前は『アクター』という芸能界の役者の話を描いていたんですよ。それが終わって次の連載について編集者と雑談していたら、「潜水艦」という言葉がポロッと出てきたんです。編集者も「潜水艦は面白そうだ」と。瀬戸内海の島の陰から、ぬうっと黒い巨大なクジラが出てくるような絵が、イメージとしてわいてきて、描けそうな気がしてきました。

伊 「クジラ」とは、潜水艦ですね。

か そうです。ところが「さあ、連載だ」という夏に、なだしお事件(88年7月に海自潜水艦と遊漁船が衝突、後者が沈没し30名が死亡した海難事故)が起きた。大きな事故で、連載予定の『モーニング』の表紙が浮上する潜水艦だったこともあり、ペンディングになったんです。3~4カ月お蔵入りにして秋に出したという、いわく付きの連載です。それから毎号ずっと連載は続いたんですけど、最初は不安なスタートでした。

次ページ:“理想の上司”を登場させる理由

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。