飛び降り自殺の巻き添えで亡くなった女子大生 遺族は損害賠償を請求できるか
10月23日、大阪・阪急大阪梅田駅近くの商業施設「HEP FIVE」(10階建て)の屋上から男子高校生(17)が飛び降り、ビルの入り口付近を歩いていた女子大生(19)の背中を直撃した。男子高校生は搬送先の病院で死亡。女子大生は意識不明の重体だったが、翌24日の午後、亡くなった。突然、大事な娘を亡くした遺族の悲しみは如何許りか。今後、高校生の親に賠償を求めることは可能なのだろうか。専門家に聞いてみた。
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現場は商業施設が立ち並ぶ繁華街。なかでも、赤い観覧車のある「HEP FIVE」は梅田のランドマークとして知られ、ビル入口前の広場は待ち合わせスポットになっている。事故当時も、多くの人が行き来していた。
「HEP FIVE」は、1階から9階までが商業施設で、10階は従業員の専用フロア。高校生は従業員用のエレベーターに乗って10階で降り、屋上へ。屋上に通じるドアの内鍵はプラスチック製カバーで覆われていたが、非常時に備えて誰でも壊して開けられるようになっていた。ドアを開けると、警備室のブザーが鳴る仕組みで、警備員が駆け付けた時は、屋上には誰もいなかったという。
飛び降り自殺に巻き込まれて亡くなるケースは、過去に何度も起きている。
2004年8月、兵庫県西宮市の市営住宅(12階建て)で、同住宅に住む無職男性(30)が8階の階段から飛び降り、1階通路にいた同住宅の無職西口弘晃さん(20)にぶつかった。2人とも病院で死亡。
2004年12月、東京・武蔵村山市の団地で、埼玉県日高市の主婦(42)が12階の廊下から飛び降り、下を歩いていた団地に住む自営業の男性(54)が巻き添えになった。2人はまもなく死亡した。
2007年11月、東京・池袋駅の「池袋パルコ」(8階建て)の屋上から25歳の女性が飛び降り、歩道を歩いていた松戸市の会社員・池田長武さん(38)の顔面を直撃した。女性は全身を強く打って死亡。男性は意識不明の重体で病院に搬送されたが、4日後に亡くなった。警察は、自殺した女性を容疑者死亡のまま重過失致死容疑で書類送検した。
賠償額は1億円
飛び降り自殺の巻き添えで亡くなるなんて、遺族にすれば到底納得はいかないはずである。自殺者の親に損害賠償請求することは可能なのだろうか。
「民法の規定では、自殺した高校生が、人が集まる場所で飛び降りたら他人に被害を与える可能性のあることを理解していれば、賠償責任を負うことになっています」
と解説するのは、弁護士の若狭勝氏。
「亡くなった女子大生は19歳ですが、就職していないので賠償額は1億円くらいと思われます。高校生の親が、息子の債務を相続すれば、親に賠償請求することができます。ただし、事件から3カ月以内に親が相続放棄すれば、法的に賠償請求ができなくなります」
飛び降り自殺の巻き添えで亡くなって賠償請求できない可能性があるとは、あまりにも理不尽ではないか。ならば、親の監督責任は追及できないのか。
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