中国「千人計画」参加者が明かす“拝金主義” 論文ボーナスは1500万円、データ捏造に走る者も

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論文ボーナスは1500万円

「偶然にも空港も含めて完全にロックダウンされる数日前に、春節休暇で帰国しましたが、私の大学でも2月初めに教授が3人ほどコロナ感染症のため亡くなりました。今は日本からウェブ会議やメールで現地の学生などとやりとりをして、研究活動を継続しています」

 一時は命の危険さえあった真嶋氏は、渡航制限が緩和されるタイミングを見計らって、また武漢へと戻る予定だとして、こうも言う。

「コロナの前は、関空から武漢への直行便がありまして年5、6回は帰国していて、日本国内の遠隔地に単身赴任している感覚でした。中国では年代物の寄宿舎暮らしですが、大学内には職員、学生など約8万人が居住し、生活に必要なものは全て大学内にあります。また、大学の食堂・スポーツ・文化施設などを一般人にも開放していて、和やかな雰囲気です。給与は特に高くありません。中国の大学教授の給与は日本と比べて普通は低いようです。その代わり研究成果を出せば報奨金が貰えるようです。同じ大学でも年収100万円の教授と何十倍の教授がいるような世界なので、競争が激しいですね」

 同じく中国トップ10に入る最難関大のひとつである浙江大学で、サルなど霊長類の遺伝子を研究する高畑亨教授(43)によれば、

「『ネイチャー』や『サイエンス』に論文が掲載されたら、1500万円くらいのボーナスが出る。自分はまだ貰ったことはありませんが、そういうところで給料の差がつくようになっています」

 給与は日本の国公立大の准教授クラス(平均年収700万円前後)。決して高くはないと高畑氏は明かした上で、

「5年前に浙江省の『千人計画』に選出された際に1500万円が支給され、5年分の研究室の運営費として5千万円を支給されました。ただし、使いたい放題というわけではなく、そこからMRIなど研究設備を揃えて秘書の給与も支払います」

データ捏造の温床に

 動物行動生態学が専門で、ダニについての研究で著名な北海道大学名誉教授・齋藤裕氏(72)は、福建省の農業科学アカデミーに招聘されたと語る。

「給料は年金を足せばまぁ生活には困らず暮らしていけるぐらい。それとは別に、『千人計画』に通った際にちょっとした賞金が出たのと、研究費は3年間で2100万円とこの分野ではかなりいい額を貰えましたよ。住居費も向こう持ちで週末は星付きのホテルに泊まった。日本では名誉教授といっても、単なる肩書きで給料も研究室もないので、中国で研究するのも悪くないと思いましてね」

 彼が「千人計画」に参加していたのは、13年から16年までの約3年間のみ。現在は日本に戻っている。

「福建省はタケノコの産地として有名ですが、その年は思うように育っていなかった。竹林に生息するダニのせいではないかとなり、専門家として呼ばれたのです。『千人計画』への応募手続きは現地の大学がやってくれました。結果的にはハダニが原因で問題解決の役に立つことができました」

 そんな齋藤氏は、中国の大学教育の“影”をこの目で見たと振り返る。

「現地の学生は、『ネイチャー』など一流誌に論文を掲載されると1千万円くらいのボーナスが出るので必死でした。それだけに、論文を見ると明らかにデータがおかしい箇所が散見されて……。私はカマをかけて見破ったりしていた。“拝金主義”は、データ捏造の温床になるので、その点はよくないと思いましたね」

週刊新潮 2020年10月29日号掲載

特集「日本の科学技術を盗む『中国千人計画』第2弾 謎のベールを剥ぐ!」より

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