中国「千人計画」参加者が明かす“拝金主義” 論文ボーナスは1500万円、データ捏造に走る者も

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計画への関与を口外しないよう命令

 再び古森氏に訊くと、

「米国では、千人計画は国益を害するものだとして警戒が強まり、連邦議会上院の国土安全保障政府問題委員会が特別調査を実施。昨年11月にその結果を報告書としてまとめたのです」

 それを読むと、これまで謎が多かった「極秘プロジェクト」の一端を窺い知ることができるという。

「『千人計画』では、参加する科学者たちに、諸外国の高度な技術を盗用してでも入手し、中国の軍事や経済に活用することを求めています。特に外国の科学者には、計画に関与することを一切口外しないよう命令しているそうです」(同)

 これらは中共と科学者が交わす契約書に明記されている場合もあるそうだ。

 さらに、である。いざ中国へと足を運べば、大学などの研究機関で「シャドー・ラボ」と呼ばれる“影の研究室”を作るよう命じられる。米国の自分の研究室と全く同じ環境を再現することで、中国が自前では産み出せない「高度な知財」を提供するよう要求されるケースもあるというから看過できない。

 言うまでもなく、これらの行為は「学術スパイ」として逮捕されるリスクが高い。それだけに危険に見合った報酬も用意されており、前述したハーバード大教授は中国から日本円で1億円強の資金提供を受けていた。

「米国人の場合、本業で貰える年俸の3、4倍は受け取っていました」(国際ジャーナリストの山田敏弘氏)

 これらの話は、米中が熾烈な覇権争いを繰り広げているからこそ明るみに出たといえるが、翻って日本人研究者の関与は、今年6月の参議院の質疑で政府が、「国として把握していない」と認めたように、ベールに包まれたままだった。

特別なビザ

 そこで本誌は中国の教育機関や論文などを分析し、「千人計画」に携わる日本人研究者を独自に特定。7月頃から接触を試みた結果の一部を「週刊新潮」10月22日号で紹介した。

 軍事兵器の開発に関与する中国の大学で、研究室を与えられた東大名誉教授は、好きな研究に没頭できる環境を評して“まるで楽園だった”と率直に語ってくれたが、取材に応じた日本人の多くが口を揃えるのは、冒頭でも触れた日本の研究環境の劣悪さである。

「他大学や他の方のことは分かりませんが、18年3月に阪大を定年になり、私の場合は名誉教授および招聘教授になれました。ただし無給で学外者と同じ立場です」

 そう話すのは、ビーム機能化学の専門家である大阪大学産業科学研究所名誉教授の真嶋哲朗氏(68)だ。

「専門であるビーム機能化学では、新しい研究をしようと思えばいろいろと高額な実験装置をその都度、開発する必要もあります。名誉教授、招聘教授の立場では、研究を続けられても制約があります。定年後、海外から幾つかお誘いを頂いた中で、阪大時代の教え子が准教授になった華中科学技術大学に教授として赴任しました」

 その中国人の教え子から「千人計画」への応募を勧められ、見事に選ばれた結果、「Rビザ」と呼ばれる10年間有効の高度人材向けの特別なビザを発給されたそうだ。

 ちなみに、真嶋氏が教授を務める件の大学は、中国トップグループの北京大や清華大に次ぐレベルで、上位ベスト10の常連校。その所在地は、奇しくも新型コロナの震源地となった湖北省の武漢である。

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