「菅総理」密接業者が不可解な公有地取引 異例の好条件、交渉では総理の名も
菅義偉総理の周辺に公有地をめぐる疑惑が噴出した。衆議院初当選以前から付き合いのある密接業者が、異例の好条件で神奈川県の土地を取得、転売していたことが明らかになったのだ。県との交渉の中では、総理の名前も出ており、事態は「第二の森友疑惑」の様相を呈している。
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問題の場所は、神奈川県横浜市・保土ケ谷区にある3千平方メートルほどの土地だ。もともと神奈川県の県有地だったこの地が、横浜市内の「(有)成光舎」なる民間業者に売却されたのは5年前のこと。代表を務める河本善鎬(かわもとよしたか)氏は菅総理を長年支援し、成光舎名義で献金を続けてきた人物である。
2007年、菅総理は、自身の所有するビルに事務所を置き、多額の事務所費を計上していたことが問題視された。この直後、菅総理が売却したビルを購入したのも成光舎だった。そこから11年まで河本代表の関連会社が所有するビルに菅事務所は入居していたから、菅総理にとっては「スポンサー」であり「不動産取引相手」であり「事務所の大家」――つまり、総理の“密接業者”といえるのだ。
そんな河本代表が関与した公有地取引のどこが問題だったのか。
ひとつは、本来、競争入札が行われるはずの公有地の取引が、成光舎との随意契約になった点だ。もともと件の県有地と隣接する土地を所有していた成光舎は「保育所と学生寮を併設した施設整備」を理由に土地の取得を要望し、横浜市長によるお墨付きである「副申書」(参考意見)が提出されたことも手伝い、取得に成功している。この副申書の作成にあたっては、県から市に対し、書き方指南の連絡があったという“厚遇”ぶりである。
契約の経緯も疑問であるが、取得額の決定も不透明である。もともと、不動産鑑定士の鑑定に基づき、土地の売却額は約4億5700万円とされていた。だがこれに河本代表は「事業の採算が合わない」などと主張。であれば改めて一般競争入札になるところを、交渉の末、県は異例の短期間での再鑑定を実施したのだ。「建築費が高騰した」ことなどを理由にした再鑑定額は、約3億8800万円。じつに15%の値引きである。
こうして15年1月に土地を取得した成光舎。県と成光舎が結んだ契約書では、土地の用途を「保育所及び学生寮」とし、売買から10年間はこの目的で土地を使用することが義務付けられた。にもかかわらず、県から売却を受けた当日、成光舎はこの土地を関連会社に転売。さらに他の業者への転売も視野に入れていたのだ。河本代表は神奈川県の呼び出しに、保育所を整備するための開発が行えず、学生寮の設置も採算が取れない、と主張したという。
本来であれば契約自体を無効にして、成光舎を訴えてもよいほどの事態だが、県は「保育所建設は困難」「成光舎は努力した」となぜか理解を示し、その後、用途指定が解除されたため、転売は公式に認められた。結果、この土地は翌16年に大手住宅メーカーに転売され、多額の利益を上げたとみられている。
そもそも、成光舎の主な業務はパチンコホールの経営。福祉関係の業務経験など皆無ゆえ、「本当に保育所を設置する能力や意欲があったかどうか疑問」と、神奈川県庁関係者は言う。
「菅さんのスポンサー」
神奈川県が作成した交渉メモによると、河本代表はその過程で、菅総理の名を2度も出している。再鑑定を巡って県と揉めていた時期に「対応によっては、知事、副知事、菅官房長官へ話しに行く」「納得がいかなければ、知事、副知事にも、(菅)官房長官にも行きますから」と発言した記録が残されているのだ。
週刊新潮の取材に対し、河本代表は菅総理に関する発言も関与も否定。菅事務所も、
「(取引への)関与はありません」
と答える。だが「かながわ市民オンブズマン」代表幹事の大川隆司弁護士はこう語るのだ。
「随意契約、求めに応じる形での再鑑定……いずれも公務員が個人の利益のために行動したような印象を受けます。売却後の無断転売も不可解。交渉の中で実質的な“脅し”の発言をしているように、政治的な要素が影響を与えた可能性は否めません」
10月29日発売の週刊新潮では、異様な取引の全内幕、河本代表と菅総理の蜜月ぶりについて報じる。