カーシェア会社破綻で窮地のオーナーたち 高級車が放置される駐車場で見た修羅場とは
一括返済を求める信販会社
最近になって、慌てふためくオーナーたちを牽制するような、新たな動きも出てきたという。
「信販会社です。おとといあたりから、5社くらいが調査にやってくるようになりました。実は、ここにある車はローンを完済していない状態にあり、所有権は信販会社にあるのです。彼らはえげつないですよ。『いますぐ鍵を全部渡せ』『うちの車を全部出してくれ』って居丈高に言ってくる。私がSグループには関係ないボランティアだと説明しても、上から目線で『それをやるのがボランティアだろうが』って詰(なじ)ってくる会社もありました。オーナーたちは、彼らが所有権を行使し、将来の利息分も含めた一括返済を求めてくることを恐れています。事実、そういう動きもあると聞いており、私は信販会社には鍵を渡さないようにしています」
外形的には、信販会社が契約した相手はオーナーであり、Sグループは関係ない。信販会社がオーナーと交わす契約書には、「期限の利益喪失」の条項があり、契約違反があった場合、将来の利息分も含めて一括返済できるとある。Sに車を貸していた行為は契約違反にあたり、信販会社は契約履行を求めているというのである。
年収400万円で1000万円のローンを組んだ信販会社
だが、今回の被害が拡大した背景として、信販会社の杜撰な融資実態もある。前出の中古車販売業社が説明する。
「Sグループを介して売買された車はすべて中古車であり、仕入れ値より100〜500万くらい高い値段で販売されています。そこでごっそり中抜きするというのが、Sグループのビジネスモデルだった。つまり、信販会社は担保となるべき車の実態をろくに調べもせず、高額ローンを組ませていたのです」
また、ほとんどのオーナーは審査で年収を虚偽申告していたという。
「信販会社からすれば、オーナーが騙したとなるのでしょうが、ろくに支払い能力があるか調査もしないまま審査を通した信販会社にも問題がある。金利が高い中古車ローンの審査はゆるゆるで、年収が400~500万程度しかないのに、1000万円ものローンを組んでいたなんて人たちがゴロゴロいるのです」
車探しに来ていたA子さん(30代)もその一人だ。A子さんは、昨年3月、ベンツのEクラスを400万円で購入。7年ローンなので利子分も合わせると、総額600万円くらいの借金を負ったこととなる。
「私の手取りは月22~23万円程度です。現状のままだと10%の高金利で月々7万円ずつ6年かけて、計470万円の残債を負わなければなりません。本当は親にでも泣きつきたいところですが、言えない事情があり、いま金利の安い銀行に借り換えできないかと掛け合っているところです」
幸い彼女の車は駐車場にあった。彼女に同行していた業者によれば、「100~150万円」で売却可能だという。
「とはいえ、返済が終わらないと売れませんからね。まずは借り換えが進むかどうか。そのうえで、信販会社が一括返済させてくれるかどうかなのですが、どうしても時間がかかってしまうし、不安はつきないです」(A子さん)
ちなみに彼女は、友人の男性を伴っていた。彼の紹介でカーシェア投資を始めたのだが、男性自身は信販会社の審査が通らず、損をすることはなかった。Sは紹介者に10万円を贈呈するキャンペーンを行っており、知人や親族の紹介でカーシェアオーナーは増えていったのだ。男性は、彼女の横で申し訳なさそうに、
「責任を感じて今日はついて来ました」
と話していた。
妻と一緒に来ていたBさん(20代)は、もっと悲惨だ。彼が駐車場の端で見つけたレクサスLS600hは、まったくエンジンがかからない状態。車検を調べると1年前に切れており、故障したまま放置されていたのである。500万円で購入したというが、修理にいくらかかるかわからない状況だ。
「初めて車を見ました。よく調べないまま買ってしまった自分にも、非があると思います。ローンは月々数万円なので、とりあえず頑張って払っていくつもりですが、今後のことはこれから考えていきたいと思います」
と、暗い表情で帰っていった。
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