世界陸連会長の「新国立で世界陸上」発言 日本にとって「ありがた迷惑」な理由

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 世界陸連のセバスチャン・コー会長が来日し、新国立競技場を視察した。

 コーさん、新国立を大層気に入ったようである。その後、東京五輪組織委員会の森喜朗会長と会談し、「世界選手権を開催するのに相応しい競技場だと実感した。東京で開催してもらえれば」と突如として世界陸上の開催まで持ち掛けた。

“東京は安全”とアピールしたに等しいこの発言は、開催が危ぶまれる東京五輪への掩護射撃。ありがたい限りと思ったら、

「いやいや、むしろ“ありがた迷惑”ですよ」

 と日本陸連関係者がため息をつく。

「そもそも新国立は、五輪終了後にトラックを剥いで、球技専用に改修することが決まっています。陸上では儲かりませんから」

 仮に、コー会長の提案通りとなれば、最速で2025年の開催になるが、

「あと5年、トラックを残さないといけない。加えて、仮設のサブトラックも残すとなると、膨大な維持費が掛かってしまいます」

 これらは国の持ち出し、つまり税金である。さらに、

「世陸は、世界陸連と開催国の陸連の共催。準備や運営は実質的に開催国の陸連が行います。でも、コロナのせいで大会が相次いで中止となり、放映権料やスポンサー料が入らない日本陸連は、金欠もいいところ。“学生から登録料を徴収する”という窮余の策が出ているほどです」

 コー会長はリップサービスで口を滑らせただけかもしれない。いちいち取り合わずスルーしてはどうか?

「彼は、近年最も成功した大会とされる12年ロンドン五輪で組織委員会会長を務めた人物。次期IOC会長の最有力候補と目されています。そんな“スポーツ界のドン”がヨーイドンと言えば、仮に絵空事でも、周囲は走り出してしまう。コー会長と会談した萩生田文科相も早速“陸上ができる施設として残すことは方策の一つ”と応じています」

 また一つ、国民への負担がズシリ……。

週刊新潮 2020年10月22日掲載

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