「反アベ」が目立つのに野党が勝てなかった理由 SNS「アンチ」の正体とは(中川淳一郎)

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 ツイッター等での自分への批判的な発言、基本はブロックすればいいですよ。「人類皆兄弟」なんて嘘ですし、「話せば分かる」も嘘だからです。話が合わない人と喋っても意味がない。皆、いい大人なんだから意見なんて変えるわけがない。

 グラフィックデザイナー・つだしんご氏が「SNSを使う全人類が知っておくべき事実」と題して、1枚の図を紹介するツイートに、約29万の「いいね」がつくなど話題となりました。図を説明するとこんな感じです。

 海に浮かぶ氷山が二つ。一つは巨大で、大部分が海の中に沈んでいる。もう一つは小さいけれど大半が海の上に出ている。これはSNS上での発言に対して、「賛成する人の絶対数は多いものの、いちいち共感のコメントはしない。反対するアンチな人の絶対数は少ないものの、積極的にコメントをしてくる」様子を表しています。

 まさにこの通りですよ。世の中の常として「アンチの声が大きい」はあります。そりゃあそうでしょう。皆さん、「むかつく・腹立った・迷惑を受けた・謝罪しろ・傷ついた・損した・問題発言だ」などは、言わなくては腹の虫が治まらない。

 一方、満足した場合は自分や仲間内で「楽しかったね♪」と言い合えばいいわけです。アンチの方々は自身の怒りの感情をなんとか世間様に知ってもらいたいため、積極的にSNSに書き込みをします。

 まさに「反アベ」の方々がネットで元気に暴れまわったこの約8年ですが、結局国政選挙では一度も野党が勝つことはありませんでしたね。それが象徴的です。

 反政権のデモも安倍政権誕生以来多数行われ、そこに共産党、社民党、立憲民主党の重鎮が参加して、演説や行進などをしてきました。それを、朝日新聞を筆頭としたリベラル系メディアが「こんなに反アベの声が盛り上がっています!」と報じるものの、多くの国民は見ているだけ。この手のデモを真剣に取材するのは彼らばかり。

 さて、アベが健康上の問題から辞任してスガ首相が誕生。「アベは独裁者」と言い続けてきた彼らの生きがいが失われることを心配していましたが、さっそく10月3日には日本学術会議の任命拒否をめぐり、官邸前でスガ首相に抗議するデモが起こりました。アベに対して振り上げた拳のやり場をどうしようか考えていたところ、リベラル系メディアの批判的な報道により「スガはアベ以上の独裁者!」とのお墨付きが出たので活動開始!

 でも、自称リベラルの皆様、そして彼らのご機嫌伺いばかりしている野党の皆様方はそろそろ別のやり口を開発してはいかが? つだ氏の描いた図が真実なんですよ。

「満足している人は意見を言わない」を、私は19年前に経験しています。社員旅行で泊まった熱海の旅館。「10円玉ゲーム」を皆でやったのですが、負けた者にはそのたびに罰ゲームがあります。

 とある回では「フロントに『いいホテルですね』と電話をする」という罰ゲームでしたが、負けて電話をかけたE先輩はただ一言、「フロントの人、意味が分からず困惑していた」。そうです。人は満足していても意見は言わず、言われた側が戸惑うだけなのです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2020年10月22日号掲載

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