日本学術会議が北大の“学問の自由”を侵害 名誉教授は「なぜ中国を批判しない」と指摘
まとまらない提言
現在は日本学術会議の内部推薦がベースとなって選出されているが、一部の“左派的”な学者が、自分たちの弟子のような学者を身内から選ぶ傾向が見られるという。
「日本学術会議の一部に党派性が存在するのは事実です。率直に申し上げまして、今の会議は各分野の権威、専門家が集まる組織とは言えなくなっていると思います。学者としての実績に欠けているにもかかわらず、ある種の政治的スタンスだけが目立っている会員が増えていると指摘せざるを得ません」(同・奈良林氏)
今回の騒動で、奈良林氏は日本学術会議がどのような活動を行っているか、公式サイトを調べてみた。すると印象的なものが2つ見つかったという。
1つ目は「総合工学委員会」の「原子力安全に関する分科会」が6月に行った「原子力安全規制の課題とあるべき姿」だ。
2つ目は「原子力利用の将来像についての検討委員会」だ。学術会議の公式サイトによると、2017年6月に開催された第2回を最後に更新されていない。
「安全に関する分科会のほうは原子力工学の専門家などが中心になっており、6月の提言も非常に評価できるものです。ところが検討委員会や、その分科会などでは人文社会系の学者が中心で、『原子力発電の将来を否定し再エネで十分』という趣旨の審議をしているため、「瀬川先生修正」と表紙にあるとおり、朱書き修正大幅に加筆された状態で、平成29年の(案)のままでストップされた状態で公開されているのです」(同・奈良林氏)
学会の方が高レベル
奈良林氏は「今の発電技術でCO2排出を削減し、数%の水力を除くと地球温暖化を防ぐことができるのは原子力発電だけという現実を直視しないと、議論は前に進みません」と言う。
「そうした事実を直視し、分科会は提言をまとめました。一方の検討委員会は原子力発電の未来について話しあうべきなのに、太陽光に代表される再生可能エネルギーなどに議論をすり替えて収拾が付かなくなったと言えます。提言を行った分科会と、朱書き修正された証拠を公開している検討委員会の対比こそが、今の日本学術会議を象徴していると思います」(同・奈良林氏)
日本学術会議の“正常化”を行うにはどうすればいいのか、奈良林氏は「民営化が最適でしょう」と提案する。
「私は複数の学会に所属していますが、その中の1つに日本工学アカデミーがあります。各大学の学長、総長、学部長クラスで構成されていますが、私は専門家枠で名を連ねています。会費は年3~5万円などとなっており、私たちがポケットマネーから支出します。議論も提言も日本学術会議とは比べものにならないほど高レベルだという自負があります」
ちなみに日本工学アカデミーはイギリスの王立工学アカデミーに範をとったものだという。
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