日本学術会議が北大の“学問の自由”を侵害 名誉教授は「なぜ中国を批判しない」と指摘
「税金」の問題
だが奈良林氏は、学問の自由を脅かされているはずの学術会議の声明を錦の御旗として活動する、「軍学共同反対連絡会」のニュースレターに紹介されている「九条の会」などが、北大のみならず、北海道内の国立大学や全国の主要国立大学における学問の自由に実質的な圧力を加え、学問の自由を侵害した過去を明らかにした。
奈良林氏に取材を申し込み、改めて日本学術会議の問題点を訊いた。すると「この問題を考えるのに重要なのは学会の存在です」と言う。
ちなみに「学会」を辞書の『広辞苑』デジタル版(岩波書店)で引くと、以下の定義が記されている。
《同じ学問を専攻する学者が,研究上の協力・連絡・意見交換などのために組織する団体。また,その会合》
「日本には100や200を超える学会があり、どれも健全に機能しています。言論・学問の自由は保障されており、真面目で真摯な研究の結果であれば、たとえ政権を批判した論文であっても発表を禁止されるようなことはありません」(奈良林氏)
学会には税金は使われていない。大半が学術的な一般社団法人で、その運営費用は、学会の会員の会費で賄われている。
有識者会議と同じ
ところが日本学術会議の経費は国が予算を使って負担している。この違いは大きいという。
「日本学術会議に求められている重要な役割は、政府への提言です。日本では総選挙で多数を占めた与党が内閣を樹立し、行政機関を指導します。日本学術会議にも税金が使われている以上、その提言は政府=与党の政策遂行にとって有益なものであるべきです」(同・奈良林氏)
学者が信念や良心に基づき、政権批判を行うことは問題ない。ただし、それは日本学術会議ではなく、学会を舞台とすべきだという。
日本学術会議は“学者の国会”と呼ばれたり、“活動の独立”が謳われたりしていることから、特権を付与されたようなイメージもある。
だが、活動の根本は国の予算を原資とし、様々なテーマについて学者が答申、勧告、報告などを行うことだ。これは政府の有識者会議と同じ位置づけと見なすことも可能だろう。
「例えば政府の有識者会議で、原発の安全性向上について提言をまとめるとします。その議論で原発の存在は大前提となるはずです。ところが『原発は不要です』という立場の有識者が参加すると、いたずらに議論が紛糾するだけで、提言がまとまらない可能性があります。有識者会議で政府の方針に理解を示す委員が少なくないのは、ある程度なら必要なことでもあるのです。ところが日本学術会議では真逆のケースも見られます」(同・奈良林氏)
[2/5ページ]