裏に小沢一郎との根深い確執 立民岩手県連からカネ返せと訴えられた「階猛議員」
10月9日、立憲民主党岩手県連(代表・小沢一郎衆院議員)は、同党の階猛衆院議員(岩手1区)が旧国民民主党在籍時の2019年2月、旧国民岩手県連の資金を不法に持ち出したとして、3300万円の損害賠償を求めて盛岡地裁に提訴した。階氏は昨年5月、小沢氏率いる旧自由党との合流に反発し、旧国民を離党。今年9月、合流新党の立民に入党した。異例の裁判の背景には、小沢VS階の確執があると言われている。
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まずは、今回の裁判について説明しよう。旧国民県連代表代行だった階氏は県連職員に指示し、県連の資金4000万円を自身の県1区総支部の口座に移した。その後、1000万円を県連に戻したが、残り3000万円は「県連からの寄付」として自身の政治塾へ移した。
階氏は、メディアの取材に「寄付は県連常任幹事会の全会一致決議に基づく」と主張。今年7月から県連と協議を続けていたが、新たに合流新党の県連代表となった小沢氏は、階氏の和解案に応じなかったため、提訴されたという。
そもそも階氏は、小沢氏の側近中の側近として知られていた。
岩手県盛岡市出身の階氏は、東京大学卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入行。在職中に司法試験に合格、弁護士となる。
2007年、高校、大学の先輩で小沢氏の側近だった達増拓也衆院議員が岩手県知事選の出馬に伴い、岩手1区補欠選挙に民主党公認で立候補した。小沢氏の強い後押しがあったことで圧勝し、小沢氏の側近となる。
東日本大震災がきっかけで
2010年1月、小沢氏の資金管理団体の隠し資産疑惑が問題となった「陸山会事件」で、小沢氏の秘書を務めた石川知裕衆院議員が政治資金規正法違反容疑で逮捕された。この時、階氏は「石川知裕代議士の逮捕を考える会」に参加し、「議員の不逮捕特権」を盾に戦うなど、小沢氏を擁護した。
ところが、2011年の東日本大震災をきっかけに、階氏は小沢氏に疑問を抱くようになる。朝日新聞WEB「論座」(2019年6月14日)で、こう語っている。
《(震災で)過酷な状況に直面したのは、同じ民主党選出の黄川田徹衆議院議員だった。黄川田氏の自宅は陸前高田市にあり、自宅・事務所が全壊して津波で流された。さらに、妻とその両親、長男、公設第2秘書が亡くなった。そんな状況にもかかわらず、黄川田氏は懸命に被災地のために奔走し、寝食を惜しんで活動した。》
《しかし、小沢氏の動きは鈍かった。みんなが被災地に来てほしいと要望しても、動かなかった。しびれを切らした黄川田氏が、小沢氏が被災地を訪問しないことについてメディアの取材に応じ、コメントを行うと、小沢氏は岩手県連で黄川田氏を処分しようとした。》
《私はこれに異議を唱えた。あまりにも理不尽で、ひどいと思ったからだ。黄川田氏の心境を考えると、いたたまれなかった。小沢氏の被災地への冷淡な態度を、どうしても理解することができなかった。》
小沢氏と完全に決別したのは、2012年7月。小沢氏が議員49人と民主党を離党し、「国民の生活が第一」を結党した時だった。階氏は一度離党届を出したが、結局民主党に残留した。先に紹介した「論座」では、以下のように語っている。
《「民主主義は数」「数は力」と言い続けてきた小沢氏が、その言葉とは全く逆の行動に出ることのおかしさ。自分の言い分が通らなくなると、せっかくまとまってきた党の仲間を裏切り、党を瓦解の方向に導こうとするご都合主義に、もうついていけないと思った。》
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