「日本へ留学した者は民族反逆者」と言った 韓国大ベストセラー作家の偽善
「親日派を全員断罪しなければこの国の未来がない」とも
文在寅(ムン・ジェイン)大統領の娘、世界的な企業のサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長と李副会長の父・李健煕(イ・ゴンヒ)会長、創業者の故・李秉喆(イ・ビョンチョル)。彼らに共通するのは、日本への留学経験である。そんな面々に「親日派」「民族反逆者」のレッテルを貼り、断罪の対象にするような発言が飛び出した。韓国の大ベストセラー作家である趙廷來(チョ・ジョンレ)によるものだから、国内での影響は小さくないようだ。
趙廷來は韓国文学の父的な存在とされ、作品は教科書にも採用。「アリラン」「太白山脈」など主たる長編作品で、1300万部超のセールスを記録している。
そんな大ベストセラー作家は12日、ソウル中区所在の韓国プレスセンターで開かれた「文壇50周年記念記者懇談会」で次のように述べた。
《土着倭寇と呼ばれる日本留学派は、日本留学から戻ったら一様に親日派になり、民族反逆者となる》
《150~160万人の親日派を全員断罪しなければこの国の未来がない》
《日本の罪悪に対して肩を持ち、歴史を歪曲する者を懲罰する法制定運動を行っている。私が積極的に先頭に立ち、法でそのような者は従えねばならない》
《反民族行為特別調査委員会(以下、「反民特委」)を復活させるべきだ》
反民特委は1948年10月、韓国国会が「親日清算」を目的に組織した機関であり、捜査権と起訴権、裁判権まで持っていた。
趙廷來の発言通りであれば、日本留学経験者は全員が親日派であり、韓国を裏切ったことになる。
文在寅大統領の娘、サムスンの歴代オーナー全員が「新日派」「民族反逆者」となる。
親日派を排除し、反民特委という超法規的機関で断罪しようとする振る舞いは、北朝鮮のような独裁国家での話に聞こえる。
国士館大学に留学したとされる文大統領の娘
文在寅大統領の娘はかつて国士館大学に留学したとされている。
文大統領と青瓦台(韓国大統領府)が彼女の国士館大学卒業に関する報道に対して否定せず、国士館大学の「21世紀アジア学部」で学んだという具体的な証言まで出ており、事実である可能性が非常に高い。
在任中、反日によって支持層を確保してきた文在寅大統領が、彼の娘を「親日派」と非難し、断罪するという笑えない状況が演出されようとしているのだ。
その上、反民特委まで復活するなら、彼女は現在滞在するタイから戻らずに帰国を断念した方が賢明だろう。
また、サムスンの創業者の故・李秉喆から現在の実質的なオーナーである李在鎔副会長までも「親日派」であり「土着倭寇」として断罪されなければならない。
李秉喆は1929年に早稲田大学政治経済学部に入学。1931年に中退した後、韓国に戻ってきた。
息子の李健煕会長は韓国延世(ヨンセ)大学商学科を退学した後、1965年に早稲田大学第一商学部に進学して卒業。さらにその長男の李在鎔副会長は1995年に慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)を卒業している。
いずれも日本の名門大学に留学した経験を通じて、サムスンを韓国だけに留まらず、世界一流企業に成長させてきた人物だ。
にもかかわらず、趙廷來の話が現実となれば、李秉喆の墓の碑文には「親日派」という文字が刻まれ、李在鎔副会長は反民特委の調査と裁判を受けて刑務所に服役する悲劇的な状況が起きうることになる。
注目すべき点は他にもある。
趙廷來本人の父親も「親日派」であり「民族反逆者」と呼ばれかねないからだ。趙廷來は2006年に自身の父親を回顧する中で、「父が日本留学から戻った後、独立運動をした」と言及した。
趙廷來の父親は僧侶だった。
朝鮮併合時代、日本が韓国の仏教を抹殺するために施行したとされる「宗教皇国化」の一環として韓国代表に選ばれて日本に留学し、韓国仏教の日本化に寄与したことでも知られている。
いくら父親が日本に留学したとしても、父親を「民族反逆者」呼ばわりするなら、これほどの親不孝者は他にいないだろう。
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