気象庁HPに不適切広告 偽ブランド、誇大広告を遮断できず…

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 これぞ「武士の商法」か。慣れぬビジネスは失敗する。

 9月15日に気象庁がホームページでの広告掲載を始めたところ、偽ブランドや過大な効果を謳うヘアケア商品などのPRが多数表示されたことが報告され、わずか20時間で停止を余儀なくされた、あの騒動だ。

「気象庁はHPの運用経費約2億4千万円の一部を広告費で賄おうと考え、ページ上の一部スペースを“販売”。これが民間企業に8700万円で買い取られ、異例の試みが成功するかと大きな話題になりました」(IT業界関係者)

 この民間企業が採用したのが「運用型広告」。多数のクライアントから広告を集め、HPを閲覧する個々人の嗜好をAIに分析させ、それに合わせて広告を選択、表示させるという手法だ。

「一つの枠を1社から数社のクライアントが押さえる固定型広告とくらべ、出稿企業を多数集められます。そのためウェブでは運用型が主流です」

 で今回、“不適切な広告”が表示されないよう、一応対策は講じていたという。

「銃砲刀剣類や宗教関連など100以上の種目をフィルタリングで遮断するよう設定していたそうです。でも、これで完璧を期すのは到底無理。サプリひとつとっても医薬品か健康食品か美容品か明確ではないし、偽ブランドは“偽”だなんて自称していません。そもそも出稿NGの分野、要素を全部列挙するなんて不可能なことなんですよ」

 だが気象庁はAIに任せておけば大丈夫、と安易に考えたらしい。民間のサイトならばクレームが来てから対処すれば済んだろうが、ことは官公庁のHP。年間79億ものページビューがあるからにはHPのスペースも高く買われるだろう、と踏んで始めた“商売”が、ものの見事に失敗した。

「消費者庁が怒りかねない広告まで出ていたのでは笑い話にもなりません」

 と、業界関係者は続ける。

「今回、運用型を採用した民間企業はウェブ広告で実績があったとは言い難い。だからフィルタリングも不十分だったのでは」

 この企業は「再発防止策の検討および再開に向けて調整を進めていく」と言い、気象庁は「原因や今後のことも含めて詳しいことは現在、お答えできない」と逃げるばかり。代替策として広告主を直接募集し、審査にかける方式も検討すると見られるが、ドロ縄の感は否めず。台風の進路は予測できても、ウェブのリスクは読めなかった気象庁。トラブルは必然だったか。

週刊新潮 2020年10月15日号掲載

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