ドローン開発にアクセルを踏む「韓国政府」 ブレーキをかける「国民」の恥ずかしい低モラル

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物議を醸したドローン墜落事故での逮捕者

 韓国のドローンは所管が国土交通部、科学技術情報通信部、産業通商資源部に分かれ、警察と軍も関わるなど、複雑に絡み合っている。

 また、2019年時点で国土交通部に届け出がなされていたドローンは1万21台で、届け出が不要な重さ12キログラム以下の小型ドローンを合わせると数十万台に達するとみられるが、韓国内のドローンは90%以上が中国製で、技術の遅れが指摘されており、利用者のモラルもドローンの普及を妨げている。

 ソウルの中心部で、業務等でドローン撮影をしたいときなど、申請した後、軍当局と日程を調整し、軍の担当官の立ち合いの下で飛行させなければならない。国の中枢機関が集まっており、特に大統領府への攻撃を避けるためだという。

 申請から実際の飛行まで2週間以上、悪天候等で飛行ができないときは再申請を行って、さらに2週間以上待つことになる。

 要するに、ドローンを使った都心部の撮影など、実質的には不可能に近いのだが、違法飛行が増えている。

 9月19日未明、釜山市水営区でドローンが墜落する事件が起きた。数十倍のズーム撮影が可能な高性能カメラが搭載されており、警察が検証したところ男女10組の生々しい行為の動画が映されていたという。

 警察は現場周辺の監視カメラを分析して、40代の会社員を逮捕した。

 会社員は警察の取り調べに対し「ドローンを紛失しただけで、故意に生々しい行為の映像を撮影したわけではない」と容疑を否認したが、検察は性暴力処罰特例法違反(カメラなどを利用した撮影)の疑いで逮捕状を請求した。

交通事故が日常茶飯事の韓国でルールが守られるのか

 釜山市水営区など高層マンションが林立する場所で、窓側に他の高層マンションや高層ビルがない場合、外から覗かれる可能性はないと考えて、カーテンを閉めずに生活しているケースが多いという。

 国防部の資料でもドローンの未承認飛行が年々増えている。

 首都圏の飛行禁止区域と休戦ライン地域で摘発された違法飛行は、2018年は15件で、2019年には28件に倍増し、今年は9月末時点ですでに43件まで増えていた。

 摘発した未承認飛行は39%が「レジャー目的」で最も多く、「試験飛行」が20・3%で続いている。また、「放送番組の撮影」や「不動産現況の撮影」など業務上の違法飛行も摘発された。

 筆者は軍の施設を見学したことがあるが、外国人は撮影禁止区域などマナーを厳守する一方、韓国人が規則を破って軍の指摘を受ける場面が多々あり、韓国軍は自国民のモラルに悩まされている。

 科学技術情報通信部が技術開発を支援し、軍が導入を進める一方、民間活用は中国などに大きく水をあけられている。

 国土交通部は宅配サービスに加えて、2025年には「ドローンタクシー」を実用化したい考えで専用空域を設定する方針だが、空域設定には軍も関わってくる。

 交通事故が日常茶飯事の韓国でルールが守られるのか、軍もさることながら、モラルが最大の障害になりそうだ。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月17日掲載

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