「松井・吉村」高い人気でも 「大阪都構想」の尻に火が付くワケ

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賛成と反対が拮抗しつつあるのは…

 大阪市を廃止して4特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票は、11月1日に投開票が行われる。2015年5月に続いて2度目となる今回の投票で「賛成多数」を得ることは、かねて一丁目一番地のポリシーとして都構想を主張してきた日本維新の会にとって悲願である。松井一郎大阪市長(56)、吉村洋文大阪府知事(45)の高い人気ゆえに、「賛成多数は確実」と見るムキもあったが、ここにきて賛成と反対は拮抗しつつある。いったい何が起こっているのか。

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 世論調査の推移が、「大阪都構想」実現に黄信号が灯っていることを雄弁に語っている。

「大阪市廃止・特別区設置住民投票(11月1日投開票)ABCテレビ・JX通信合同世論調査」によると、以下の通りである。

 9月19~20日実施
 賛成49・1% 反対35・3%

 9月26~27日実施
 賛成47・8% 反対36・8%

 10月3~4日実施
 賛成45・3% 反対40・2%

 10月10~11日実施
 賛成45・4% 反対42・3%

「松井さんら維新勢と菅義偉首相は昵懇の間柄ですが、だからと言って今回の結果が国政に影響を及ぼすようなことはない。そんなこともあって東京ではあんまり盛り上がってないようですが、大阪はかなりホットですよ」

 と永田町関係者。

「維新楽勝」の空気が変わり始めたのは、9月23日に東京・内幸町の日本記者クラブで松井、吉村の両氏が大阪都構想について会見を行って以降だという。

“おばあちゃん、水道料金があがったら困るやろ”

 仮に敗れた場合の自身の進退について問われた松井市長は、大要こう話した。

《僕の時代に、もう2度と都構想の話はしない。基本的に政治家ですから、任期はしっかりと務めます。橋下さんも任期はしっかり務めた》

《都構想の住民投票は勝つためにやっているが、負けたら、僕自身の政治家としては終了です》

「要するに、『負けたら引退』と言ってしまったので、だったらクビ取りに行こうやと反対派が勢いづいた点は否めないですね」

 2015年5月の1度目の住民投票では僅差で敗北し、政界引退した橋下徹氏(当時の大阪市長)のひそみにならったところもあるのだろう。

「背水の陣であることをアピールして賛成派を引き締める効果を狙ってのことなんでしょうが、ヒロイズムに酔いしれている感じもあって、今のところ逆効果だったかもしれませんね」

 別の永田町関係者はこんな見方をする。

「メディア出演やSNSとか、そういった表の部分では維新の力は強く、主張は通りやすい。でも、反対派はそれこそ草の根的に水面下で運動している」

「真偽はともかく、“おばあちゃん、水道料金があがったら困るやろ”とか“(70歳になったら使えて、地下鉄などが50円で乗れる)敬老パスがなくなるかもしれへんで”などと、丁寧に1人1人に説明を続けているようです」

「あとは、“そもそも今回の件は大阪都構想住民投票ではなくて、『大阪市廃止・特別区設置住民投票』って言うんやで。大阪市がなくなるんやで”とかですね」

「世論調査で都構想に反対の数字があがっているのは、そのあたりの活動が奏功しているからでしょう。共産党の活動家たちが一気に集結しているというような情報もありますね」

 15年の住民投票と違うのは、当時は反対だった公明党が賛成に転じたことだ。創価学会・公明党に「常勝関西」という言葉があるように、かの地では無類の強さ、鉄の結束を誇るわけだが、

「前回、“孫や子の代まで禍根が残る”と公明党は市議会で都構想を批判していました。それを180度転換するわけですから、理解が追い付かない支持者が出てくるのは仕方ないでしょう」

松井引退後に「山本太郎」出馬も?

「学会・公明党の支持者は低所得者、庶民層が少なくない。だから、先ほどお話ししたのと同じで、“都構想実現で生活がより苦しくなる”というような説明を耳にしてしまうと、反対に流れるということもあるでしょう」

「また、過去に橋下さんが学会や池田大作名誉会長を批判していたことがあって、そういったところも支持拡大の足かせになっている。投票に行かない支持者がかなりいるだろうと我々は見ています」

 その一方で、こんな話も。

「れいわ新選組の山本太郎代表が大阪入りし、都構想批判を続けているのも気になりますね。街頭演説をゲリラ的にこなしているのは、松井さんを引きずりおろした後、自身が出馬するつもりで、そのための選挙活動にすでに入っているのではと憶測を呼んでいます」

週刊新潮WEB取材班

2020年10月17日掲載

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