「文大統領スルー」の北朝鮮が想定する 「バイデン当選」という悪夢
表向き、仲介者の文大統領にも花を持たせつつ
宋議員は自分のフェイスブックに「結局終戦宣言が答えだ」という文を投稿し、「南北が両手を取り合う日が訪れることを金委員長は願っている」「南の同胞たちに対する愛情を示した」のだという考えを表明した。
さらに、「北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の公開は、なぜ早急に『南北米』間の対話が必要なのかを示唆している。結局、北の核問題は米朝関係正常化と『終戦協定』の『平和協定』への転換を通じてのみ解決できるからだ」とし、「終戦宣言はICBM、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など北朝鮮の追加挑発を防ぐための最も積極的な措置として意味がある」と述べた。
しかし、私は金委員長の今回の発言の背景に、それよりも重要な理由があると思う。
というのは、文在寅大統領は今年行われるアメリカの大統領選挙の前に、ドナルド・トランプ米大統領と金委員長の会談の実現を推進してきたからだ。
事実上、仲裁者の役割を担っているわけだ。
米国と妥協するには、韓国政府と国民の共感を得る必要があり、そのために文大統領にも、ある種の花を持たせてやらなければならない。
最近、西海で起きた公務員射殺事件について、大統領府が公開した金正恩委員長の親書に異例の謝罪があったことを見ると、南北間の関係改善に対して北側が少しずつ柔和な態度を見せているのは、確かである。それがたとえ表向きのことであっても。
おそらく北朝鮮は現在の米国情勢を綿密に計算していることだろう。
アメリカの大統領選挙で共和党のトランプ大統領とバイデン民主党候補のどちらが当選するかによって、北朝鮮に対する圧迫と制裁の強度が大きく変わるためだ。
バイデン氏が当選した場合、北朝鮮の状況は変わることだろう。
バイデン氏が大統領になれば…
これまでの民主党政権は、北朝鮮に対して常に強硬な姿勢を取ってきた。
このため、バイデン氏が大統領になれば、金正恩委員長は米朝関係が少なからずトランプ政権のときよりも悪化すると見通しているに違いない。
場合によっては、再び米朝間の緊張が高まる可能性だってある。
米国の今後の政局を計算に入れてトランプになろうがバイデンになろうが、金正恩委員長は「米国が軍事力を使おうとすれば、私は我々の最も強力な攻撃力を先制的に総動員して報復する」と述べたのは、事実上バイデン当選に重きを置き、北朝鮮があらかじめ背水の陣を敷いたことになる。
たとえ「いかなる勢力であれ」といって直接米国に言及してはいないが、それが米国を指していることは容易に想像できる。
事実上、米国に対する警告なのだ。
この日の閲兵式で公開された新型大陸間弾道ミサイルICBMは、従来の火星15型より長さが長くなり直径も太くなり射程距離が長くなり、実際に米国本土に脅威を与える可能性があると情報当局は把握した。
米国もすぐに反応した。
この日(現地時間)、米国は「北朝鮮が完全な非核化を達成するため、持続的かつ実質的な交渉に参加することを促す」とし、「北朝鮮が核と弾道ミサイル計画を引き続き優先視することには失望している」という反応を見せた。
米国は、北朝鮮との対話の条件として、北朝鮮が保有するすべての核兵器の無条件廃棄を前提に掲げている。
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